ヨコハマ中華街&新山手

[ Chinatown BBS Log / No.281〜No.330 ]


蒼い炎

Handle : “スピードキング”サンタナ   Date : 99/11/04(Thu) 20:35
Style : チャクラ◎・カブトワリ・カゼ●   Aj/Jender : 32歳/男
Post : 大災厄史編纂室


戦闘による高揚感が去り、変わってゾッとするような寒気がウェズの体を伝い始めた。
心臓と腹部に銃弾を受け、横たわるかつての友の姿を呆然と見つめながら、心臓を鷲掴みにされたような鈍い痛みを憶え、ウェズは低く呻いた。
と・・・
「何、しけたツラしてやがる。」
友のブラウンの瞳がこちらを見ていた。そして、大丈夫だという風にニヤリと笑ってみせる。
その傷が確かに致命傷であり、無理に笑っているのはあきらかだったが、そこにはあの懐かしい太陽のような笑みがあった。
「戦場でどちらかが死に、どちらかが残るのは当たり前の事だ。おまえが気に病む事じゃない。そうだろう?」
「・・・そうだな。」
掠れた声でウェズが答える。
「なあ・・・1つ教えてくれ。なぜあの時オレの動きが読めたんだ?」
「確かにおまえにはオレの動きが見えてなかったはずだ。なのになぜ、オレの攻撃が解ったんだ?」
その言葉の響きにあるのは疑問ではなく確認だった。だから、ウェズリィは答えた。
「おまえの動きが正確だったからさ。」
「・・・」
「おまえの動きが“機械のように”正確だったから、いくら早くてもオレには解ったのさ。昔のおまえなら、負けたのはオレの方だったろう。」
「そうか・・・」
目を閉じ、何かをかみしめるようにサンタナが言った。
「それがオレが失っておまえが手に入れた力なんだな。・・・ガッ!」
「おい、無理をするな。」
不意に吐血し、苦しげにせき込む彼を気遣って歩みよろうとしたウェズを片手を上げて制し、続ける。
「大丈夫だ。」
そして、ゆっくりと目を開けた。その瞳にはすでに死の陰りがさし、何も見えてはいないようだった。しかし、何かを伝えようとする強い意志が感じられた。
「おまえに頼みがある。最後の頼みだ。」
「ああ。」
ウェズにはただ頷く事しかできない。
「仇を、皆の仇をとってくれ。」
「仇?」
「ヨシュア、マシュウ、榊、リン達の仇だ。」
「!」
ウェズの目が驚愕に見開かれた。忘れるはずもないその名は、かつて彼が所属していた部隊、“デヴィルズ・ブリゲート”の戦友達の名だったのだ。
「何を・・・言っているんだ。」
「ウェズ。オレ達が全滅したあの事件は仕組まれたものだ。」
「・・・」
口の中にアドレナリンのイヤな味が広がっていくのを感じながら、彼は次の言葉を待った。
「大災厄史編纂室・・・いや、フェニックスプロジェクトによって仕組まれたものだったんだ。」
「コレはオレ達の闘いだ、おまえの手でけりをつけてくれ。」
炎が
蒼く燃える炎が身の内にやどるのをウェズリィは確かに感じた。
それは、共に死線をくぐり抜けた友の魂の灯火だったのかもしれない。
「ああ・・まかせろ。」
低く呟く。
その様子に、満足したように頷くとサンタナは再び目を閉じた。
「さあ、夢を・・・悪夢を終わらせてくれ。もう二度と親友に銃を向けるのはごめんだからな・・・」
その言葉の意味は解っていた。
そして彼の望みが何であるかも。
ウェズはゆっくりとライデンを向け、そして二度トリガーを引いた。
引き金がこれほど重いと感じた事はなかった。そして銃声が響き渡る度に自分の中の大切な何かが確実に死んでいくのを彼は感じた。

“なあ、ウェズ。年をとったら、どこかで探偵でもやらないか?オレ達は最高のコンビだったんだと、息子や孫に自慢してやろうぜ。”
“馬鹿野郎、ジジイになってもおまえの面倒を見させるつもりなのか?”

彼の陽気な声が聞こえたような気がした。

 [ No.330 ]


ザンジュウケン、高見の見物と洒落こむ。

Handle : “バトロイド”斬銃拳   Date : 99/11/04(Thu) 00:35
Style : カタナ◎● カブトワリ チャクラ   Aj/Jender : 25歳/男性
Post : フリーランス/ソロ


「ほほう・・・」
STARビルを双眼鏡で覗く一人のソロ、斬銃拳。
「ふむふむ、私と同じ“強化兵(バトロイド)”デスか・・・」
ギターケースに腰掛け、スナック菓子をつまむ。
「というコトは・・・“千眼”サンのお出ましデスね。
あっはっは、これは愉快デス。」
表情を崩さず横に立つシルエットを振りかえる。
「おや、奇遇デスねえ。私もスポーツは観戦よりもヤる方が好きなのデスよ」

 [ No.329 ]


真実の探求者

Handle : ミゲーレ・アルキテット   Date : 99/11/03(Wed) 14:13
Style : トーキー◎・フェイト・レッガー●   Aj/Jender : 28歳/男
Post : マリオネット契約社員


「何を言ってるんですか。」
ミゲーレは三田の机を両手で叩き、そのまま身を乗り出すようにして抗議の声を上げた。
タバコの煙が霧のように常たちこめ、局員の喧噪で騒がしいこのフロアにあっても、彼の声はひときわ大きく響きわたった。しかし、二人のそういったやりとりが毎度の事であるのか、皆、すぐに自分の仕事へと戻っていく。
「ダメだ。」
編集長は何事もなかったように、チラと目の前の男の顔を見、実にあっさりと言った。
「なぜです。“霧の中の怪物”。特ダネじゃないですか。それにコレはアイツが、あの半人前が命賭けでひろったネタなんだ。それにオレ達が答えてやらなくてどうするんだ。」
「ヤレヤレ。」
三田は軽く嘆息すると睨み付けるように正面から彼の顔を見た。
「あの娘の事になると、おまえはなぜそうムキになるんだ。ん?」
「ちゃかさないで下さい。」
「もともとは例の誘拐事件との関連をにらんでおまえが彼女を焚き付けたのだろう?」
「それに、奴らは、あの怪物達はまぎれもなく例の組織に関わる人間だぞ。解っているのか、その意味が?」
「フェニックス・プロジェクト・・・」
ミゲーレが呻くように言った。
「そうだ、オレ達にとって唯一のタブーだ。それが解っているのなら、すぐにでも手を・・」
「あなただ。」
「何?」
ミゲーレの呟きを三田が聞き返す。
「この街には人々の目に触れ得ぬ宝が沢山眠っている、その宝に真実の輝きを与えて世に伝えるのがオレ達の仕事だと、オレ達は真実のトレジャーハンターなんだと、ただのチンピラだったオレに教えてくれたのはあなただ、三田さん。」
どこか、親にすがる子供のような、そんな哀しげな表情でミゲーレが彼の尊敬する先輩であり、友人でもある男の顔を見た。
「ヤレヤレ・・」
三田はもう一度嘆息すると彼から視線をそらした。
そして独り言のように呟く。
「明日の朝のニュースは例の籠城事件を流す予定だったんだが、今のところ進展もないし、何か新しいネタがほしいところだな。」
「?」
ミゲーレが怪訝な顔をする。しかし、三田は素知らぬ顔で続けた。
「それに、直前で差し込めばいちいち内容をチェックする暇もないかもしれんな。オレも忙しいからな。」
「おやじさん。」
三田の意図する事を悟り、ミゲーレが顔を輝かせた。
「何をしている、早く行け。」
三田が出来の悪い息子を見るような目でミゲーレの方を見、ニヤリと笑った。
「ありがとう。」
礼を言うやいなや、駆け出していくミゲーレの後ろすがたを見送り、彼は再びため息をついた。

 [ No.328 ]


Basic Connection

Handle : “銀狼” 神楽 愼司   Date : 99/11/03(Wed) 03:57
Style : カゼ◎、カゼ●、タタラ   Aj/Jender : 推定年齢26 / 男性
Post : シルバーレスキュー グラウンドスタッフ



風土の声を合図にシンジは押さえつけていた衝動を解き放った。

「我那覇! 先攻しろ!!」
同じ族だけの目線だけの合図で美加の車両を先頭に、2台のバイクで疾駆する。
美加と二人、タービンを限界まで振りまわし、壁と言う壁、手すりと言う手すりを使い、サイレンスモードで押さえられて唸り燃え上がるエンジンと共に熱くなる車体を自らの腕や足を絡めて繰り、体重を乗せた身体そのもので押さえ込む様にロビーと階段を走り、登ってゆく。
「まずは風土ダ」
デス・スターから降りてくる情報とカーゴルームで渡されたこのビルの構造図を重ねて映すバイザー、そしてあまりの速度に灰色のドームに見えかけるさして広くもない屋内の流れる風景を交互に見つめ身体を動かしながらA-Killerを駆り、背中にしがみ付きながらもしっかりと自分と辺りを隙無く見つめる沖に、そして美加と美琴に、唸りながら耳元を掠める風に乗せて声高に叫ぶ。
目の前で次々と下りてゆく隔壁をタイミングを見てくぐり、閉じさせるもの、閉じさせてはならないものを素早く選びながらその隔壁を動かすインターフェイスを美加と交互に銃で撃ち抜き、スピードと車体の重さを乗せたタイヤで・・ブーツの踵で打ち砕きながら誰にも邪魔させない風土の為の通路-みち-を作ってゆく。
階段ですれ違う幾人かの兵士には、そのまま車体を乗せて壁へ寄せて押しつぶし、圧迫される苦しみに呻くその顎に銃を刺し込む。
「振りきれ!!」
一瞬のタイミングで美加の車両が荒々しく軋むタイアの摩擦音だけを残して、先に逃れ、見えなくなる。
「Dodge this!!」狂った笑みで歪む口元を開き、迷う事無く引き金を引く。

車体と身体がどんどんと血にまみれてゆく。
車体と腕も足も届かない相手には目もくれず、銃弾を交わす様に走り抜けてゆく。
俺達をゆっくりと下から押し上げてゆくあの男だ。逃した奴らを殺り過ごす事など数も無ければ造作も無い筈だ。
風土がかけた結界に紛れる様にビルの彼処に張り巡らされた視線を躱しながら、シンジはひたすら沖を乗せ、ビルの内部を駆け上がる。
カーゴのガラスを通して見たあの少女を取り巻くあの惨状から一体、幾程の時間が経ったのだろう。
シンジはだんだんと広くなる通路に屋上へと近づいている事を感じ取りながら肩に置かれている沖の右手に左手を重ねる。
「そろそろ・・・着くぞ!」
風土の言った回し過ぎだと言う言葉が何度も脳裏に蘇る。
逸る気持ちを切れ掛かった理性で必死に押さえ込みながら最後の隔壁を抜けて時間の迫る屋上の舞台へとサイレンスモードを解除して踊りだす。

広がった視界にあの少女へと駆ける美琴と蹲る男が二人。そして、ショットガンを手に凍て付く視線を投げ付ける美加の視線を見つめる。
失速したバイクが獣の咆哮のごとく叫びを上げて止まる。その間にシンジは反射的に車体から手を放して所持する銃に弾丸を込め直した。
ホルスターに収め、カウルのポケットから11ミリに相当する炸薬が詰まったカートリッジを両腕の拳を包むナックルへと交互に装填する。
「そこに居るんダロ?・・出てコイよ。そういうオトコは嫌われるんダゼ?」
美加が呟き、銃を持つ腕を上げる。
同時に背後の通路から駆けて来る恐らく風土のものであろう足音が響いてくる。

シンジは上がる呼吸を押さえ込む様に一文字に口を結び、美加が視線を投げやる方には目を遣らずに、バイザーに映るものを見つめる。
『選択をせよ、シルバーウルフ』
バイザーに映る銀色に輝くその問いかけを見つめながらシンジは、カウルに両手を置き、そして_________________軋みを上げる程拳を握り締めた。

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.327 ]


戦慄

Handle : ”LadyViorett”我那覇 美加   Date : 99/11/03(Wed) 02:04
Style : カブト◎=カゼ●=カブトワリ   Aj/Jender : 28/female
Post : フリーのカブト/元”麗韻暴”二代目頭の兼業主婦


「バーニィ!!」
美琴はかけて行く。
「美琴?!」
彼女は美加の手をすり抜けて影の元に走り抜けていく。
『・・ったく無用心だ。』
バイクを降りて近づこうとした時、一番イヤな予感がした。
バイクに下げていたショットガンとクリスタル・シールドを取り出し、構える。
そしてWINZとIANUSUを同調させる。
腰に9−WH、さっき武器庫から抜き取った降魔刀とハーフプレート・・
意を決意すると、美加は喋り始めた。

「そこに居るんダロ?・・出てコイよ。
そういうオトコは嫌われるんダゼ?」

そして後ろを振り向く。

 [ No.326 ]


“紅”の演舞

Handle : “紅の瞳”秦 真理   Date : 99/11/02(Tue) 23:55
Style : Mistress◎Regger Katana●   Aj/Jender : 24/female
Post : N◎VA三合会


「帰ってきてね。バーニィと皆の所に………」
まっすぐで純粋に、自分に向けられる視線が痛かった。思わず、弥勒越しに視線をそらす。
続けておどけた口調でいう美琴の姿が眩しかった。その光に焼かれてしまいそうな程に…今の真理には。
「死ぬなよ」
それは、誰がいったのか?正面のひしゃげたドアに羽也と共に、向かおうとする真理の背後で聞こえた。
その言葉に、真理は首をめぐらし、微笑んだ。深く、そして静かに。
「行きますよ」
覚悟を秘めた口調で言うや、羽也は正面のドアを空けた。

 表情の浮かばない顔で、真理は羽也と共に並んで暗いビル内へと歩き出す。悠然と、ゆっくりとしかし、確実な足取りで。
─一歩、IANUSUが思考トリガーを引く。
─二歩、真理のバディ『九尾の狐.』がその、尾を翻す。
─三歩、“オーヴァ・ドライヴ”“ブースタ・マスタ”“オートマン”起動。
 アドレナリンが全身を駆け巡る、一歩一歩確実に真理を闘いの中へと、導いていく。
 弥勒と“アイ・オヴ・ザ・タイガー”に複数の敵の姿を捉えた──アサルト・ライフルより、一斉に放たれる銃弾。
刹那─羽也の背後に、真理は身をすべらせる。無色透明の盾を羽也が翻す、熟練したカブトの技。
発砲音が途絶えた瞬間、真理は羽也の背後から大きく踊り出た。
射線をそらす為に壁を床のように疾ける真理を追うように、マガジンを入れ替えたライフルから放たれた銃弾が、壁を穿つ。
しなやかな猫化の肉食獣を思わせる動きで、柱を背にした目標を捕らえて舞い降りるがごとく、襲いかかった。銃口が、真理 の頭を捕らえた瞬間、着地した真理は体を僅かにスライドさせる。
──クロック・ブーストの影響か、世界がコマ送りの映画のよう に、動きを止める。
 ほほを額から流れた血をはじくように、銃弾が僅かにかすめた─ぞくぞくするほどの生と死の瀬戸際の瞬間。この瞬間にだけ、 生きていることを感じられる自分が確かにそこにいた。
「はあっ!」 
 吐き出した闘気とともに刀を鞘走らせ、月光が僅かに入る室内の闇を銀光が斬り裂く。そのまま次の目標を捕らえて、疾り、タイミングをずらして急所を狙い、刀を数度切り返す。─漆黒のフェイトコートが外套のように翻った。
その舞いが繰り返された数瞬後、残されたのは血風と、崩れ落ちる複数の黒い目標──そして、口の両端を歪めた、見るもの戦慄させずにはいられない、真理の冷たく薄い微笑。
想い人や真理を取り巻く友人達に、その心に出会う前の『殺戮者』がそこに、いた。
「先に行きなさい!」
「ここは、私達でなんとかします!ですから!」
返り血を払おうともせず、表情を引き締め叫ぶ真理に続いて、羽也が銃弾を防ぎ、声を張り上げた。
 その言葉に答えるように、二台のバイクと一人の男が疾駆する。その行く手を阻むべく、展開した黒い目標達へ微笑みを薄めた表情のまま、真理が背後から舞い降り、銀光とクリスタル・ナイフの投擲が舞う、羽也が真理へと向けられた銃弾をその技で弾く。
銀狼の背にまたがった、和服姿の沖がトンプソンSMGを行く手を阻むもの達へと乱射した。AP弾が複数の目標を穿ち、真理と視線があう、沖はニヤリと笑う。
階段の入り口に取り付いた来方が、一瞬だけこちらを見、右手を握り親指を上げるのを見て、二人は驚くほど無邪気に微笑んだ。やわらかく、そして、優しい笑み。
 彼らの実力を、信じるがゆえの、願いであり、期待だった。
──しかし、真理の弥勒越しの瞳に、深く哀しい光が宿っていたのには誰も気がつかなかった。
 目的を持つが故の、自ら選択した道。護るべきものの為に、帰るべき場所のために選んだ『過去』への回帰、それを選ばねばならなかった自分へと向けられた最後の哀しみだった…。
──迷いは、ない。
「…ここから先は進めると思わないことね」  
 真理がそう冷たく言い放つと再び、銀光が走る、外套のように翻る。羽也が彗星剣を抜き放った。
 6階に展開していた黒い目標達が沈黙するまで、さほど時間はかからなかった。
 僅かな間、死に近い静寂に包まれる。

「羽也さん、暫く護って頂けて?」
 そういうやいなや真理は、エレベーターのドアに近寄り、血を払うと刀を一撃、二撃、切り返して振るい、力任せにドアをけり破った。
 真理が思ったとおり、エレベーターは動いていた。“箱”はまだ下にある。
 刀を鞘に収めて、オメガREDを鞭状態で起動、ワイヤーに巻きつけ、高速振動モードをいれる。激しい火花が散り、ワイヤーがぶつりと切れた。
 下の方で重いものが下へとぶつかる音がした。
「有難う、さて、次のお出迎えはもう少し素敵なエスコートなら良いのだけどね」

 欲望の街に『過去』より舞い降りた修羅が舞う、“紅”の演舞。
真理を護るように闘う、羽也の目にはその凄絶なる強さが、余りにも危うく、哀しく見えた。  
 下の階よりいくつもの気配がこの階へと、上がってくる。
 誰かの視線を感じて、真理は羽也へと合図すると階段のほうへと跳躍した。
 そして…再び、銀光と“紅”が舞う。
 闘気が駆け巡る全身に呼応するように、左の紅の義眼のあたりの刀傷が、うっすらと、浮かび上がり、真理はもう一度凄絶に笑った。

 [ No.325 ]


straightly strut

Handle : ”Sworn Sword”九条 誠   Date : 99/11/02(Tue) 17:57
Style : エグゼク◎●、カリスマ、レッガー   Aj/Jender : male/30代前半
Post : イワサキ


彼等が移動を開始して数分、隠れ家で彼は考え事をしていた。
「……フェニックスプロジェクトか。思ったより厄介だな」
テレンスとの交渉より思い出すのは”彼”との会見。
ゴードンとの会見はある意味驚くほどに簡単に終わった。しかし困難な事でもあった。
連絡を付け単刀直入に用件を伝える。内容は壬生達を倒す代わりにフェニックスプロジェクトの情報を。そして彼は言う。
「引き返す事のできない暗き闇の中にあなたは足を踏み入れようとしているのですよ。それでもよろしいのですか?」
「進む道は修羅の道、引き返す道はすでにありませんよ」
微笑をする、果たして彼は言う。
フェニックスプロジェクトとは”災厄”を起こした集団であり今回の事件でまたしても”災厄”を起こすつもりであると言うことを、構成人員は企業のトップ。だから彼も手出しはしにくいとも言う。壬生達はそれの末端の一つでしかないことを。
「もう一度災厄を……これだから狂った企業のお偉方には困らさせられる」
苦笑を浮かべて彼からの条件−壬生達の死体を引き渡すこと−を引き受ける。
そして、会見は終わった。
「さて今から行きますか。着く頃には……いや、可能性にかけるのは止めましょう。彼等の働きに期待しておきますか」
そう言い彼は隠れ家から出ていった……

 [ No.324 ]


犀は投げられた

Handle : 『親愛なる天使』モリー美琴   Date : 99/11/02(Tue) 13:22
Style : カブト=カブト=カブト   Aj/Jender : 14/女性
Post : フリーランス


 高度を下げるヘリから飛び出すいくつもの人影。
 美琴は、自分に任せるように告げた後に動こうとしている真理の服の袖をそっと引いた。緊迫した表情のまま真理が振り向く。
「帰ってきてね。バーニィと皆の所に………」
真剣なまなざしの美琴。まっすぐな視線が痛いのか、真理が少しだけ表情をゆがめて視線をそらす。
「帰ってこなかったら、大泣きするんだから。バーニィと2人で」
にっこり笑って、少しおどけたように美琴は続けた。来土達が苦笑しているのが分かる。
 一瞬だけ周りの空気が優しくなる。
 それを感じてから、美琴は小さく微笑んで我那覇の方をむいて頭を下げる。彼女はうなずくと、何も言わずにシートを示した。
「行くわよ」
彼女の言葉にうなずき、ぎゅっとしがみつく。
(待っててね、バーニィ。今行くから………)
 我那覇の背中につかまりながら、彼女はつぶやいていた。
 そして、屋上に到着すると、そこには影が3つある。動くものが2つと、少し離れた所に1つ………。
「バーニィ!!」
 美琴は、少し離れた動こうとしない影に向かって叫んだ。
 我那覇が押さえようとするが、その手をすり抜けて美琴はかけていく。ずっと探していた、会いたかった彼女の元に………。
 

 [ No.323 ]


冥府の獣達

Handle : ”無免許探偵”ウェズリィ   Date : 99/11/02(Tue) 12:56
Style : KABUTO,FATE,KABUTO-WARI◎●   Aj/Jender : 外見20代/Male
Post : "Gunslinger"


あの動きの源になっているものは何か。あの異様な動きの源は何か。それを止めなければおそらく今のウェズには勝ち目はないだろう。そのことは分かっていた。どこをねらうかだ。
眼に金属製のレッグガードとローラーブレードが止まった。
あれさえ奪ってしまえば神速とも言える動きを停めることは可能だ。
しかしあれだけの速度で動いているものを狙撃するのはいかなるカブトワリでも困難だった。
だが・・・唯一絶対、彼の動きを止められる瞬間があるとすれば・・・。
軽快に刻んでいたアサルトライフルの銃声がわずかに途切れた。
彼はわざと銃を持っている右腕をサンタナに見せつけるように、今まで身を隠していた屋上の電飾の影から身を滑らせた。当然サンタナの真正面に来るようにだ。従って彼が自分のどこを蹴りで狙うかなぞ考えなくても体で分かる。間違えない。あいつの蹴りは頭上に来る!
異様な音を立てて蹴りをガードした右腕がへし折れた。その腕から愛用の"Model.29RE C.M.C.(Combat Magnum Custom)"が弾き飛ばされる。
この瞬間だ。この瞬間を待っていた。
サンタナが蹴りを決め、繰り出した足を元に戻そうとするわずかな瞬間だけ、その神速と謳われた動きは一瞬止まる。
(さぁ噛み殺せ、”Kerberos”!)
Kerberos(ケルベロス)。冥府に巣くう三首の猟犬に準えたIANUSのバディに命じる。
全ての思考トリガーをすべてONにする。”ブースタ・マスタ”、”アドレナリン”、”ドラッグ・スタビライザ”内のドラッグが同時に体にぶち込まれると自動的に痛覚を遮断する。
自分が自分でなくなる。自分は今”獣”なのだ。冷たき炎を心に灯す忌まわしき冥府の獣。
折れた右腕から走る痛みが消えると同時に左手の”P4”を抜き打ちをした。
コンマ三秒。銃声は二つ。
もとの体勢に戻ろうとしたサンタナの両足から、銀の輝きを秘めた金属製のレッグガードとローラーブレードが弾き飛ばされた。必殺の一撃だったが辛うじてサンタナが致命傷はさけたらしい事は瞬時に見て取れた。やはり9mmパラペラムだとこちらに分が悪い。
同時に”P4”を投げ飛ばす。銃から伝わる反動と蹴りを受けた衝撃を使って、そのまま流れるように身を転がすと目の前に転がっている愛用の"Model.29RE C.M.C."を左手に掴み取った。
そのままの流れで銃口を向ける。
目の前にはアサルトライフルの銃口があった。
反応は同時。
相打ちのタイミングだった。
しかし銃声は一発しか響かなかった。
ウェズの凍り付いた瞳はサンタナの体が吹っ飛び、屋上の電飾に叩き付けられる一部始終をただ捉えているだけだった。

http://www.mietsu.tsu.mie.jp/keijun/trpg/nova/cast/cast03.htm [ No.322 ]


show time

Handle : 来方 風土(きたかた かざと)   Date : 99/11/02(Tue) 07:14
Style : バサラ●・マヤカシ・チャクラ◎   Aj/Jender : 21歳/男
Post : フリーランス


「死ぬなよ」
それは、誰が言ったのか。ヘリから飛び出した七人は、銃弾の飛び交う中を突き進む。
「先に行きなさい!」
「ここは、私達でなんとかします!ですから!」
真理のその言葉を背後に聴きながら、二台のバイクと一人の男は疾走する。群がる敵を排除しながら、上の階へと続く階段に向かう。階段の入り口に取り付いた風土は、背後を振り返る。それは、ほんの僅かな一瞬だったが、風土の視線と真理、羽也の視線がぶつかる。風土は右の手を握り親指を上げる、その瞬間、真理と羽也の二人が微笑む。その笑みは、驚く程、無邪気な笑みだった。
「ちょっと、待ってくれ」
階段を駆け上がる中、風土のその言葉に、シンジと我那覇はバイクを止める。それぞれのバイクに同乗していた、モリー、沖の二人も風土の方を見る。
「一体何なんだ、こんな時に?」
シンジが、風土に問う。その声には、僅かながらだが、焦りが含まれていた。まるで、その気持ちを代弁するかの様に、エンジンが唸りをあげる。
「ま、気の回し過ぎだと、思うんだけどね」
風土は二台のバイクに触れると、目を閉じる。それは時間にすれば、ほんの僅かな時間ではあった。
「また、ナンカのマジナイかい?」
我那覇の問いに、風土はうなずく。そして、いつもの笑みでは無く、真剣な表情を浮かべる。
「皆、死ぬなよ。死んでもなんて、絶対考えるなよ。自分の為に、誰かが死んだら、あの子が悲しむぜ」
そう、いっきに言い終えると、何時もの笑みを浮かべる。
「さあ、行こうぜ。show timeだ」

 [ No.321 ]


突入

Handle : 羽也・バートン   Date : 99/11/02(Tue) 04:51
Style : ミストレス◎カブト=カブト●   Aj/Jender : 26歳/女性
Post : フリーランス


月が中空にさしかかっている。舞台にはお誂えむきというところか。
墜落。ビルへの衝突。ヘリが大きく揺れて落ちた時の衝撃が皆を襲った。
そのとき、羽也の身体が反射的に動いていた。真理を庇うために。しっかりと、彼女を支える。
「大丈夫ですか?」
それでも、庇いきれなくて額に傷を負ってしまった真理を支えながら羽也は声をかける。
「大丈夫よ…」
と、頭から流れる血をぬぐいもせずに真理が微笑んでいた。…この時羽也は一抹の不安を真理に感じる。果たしてそれが気のせいなのか?答は、まだ出そうにも無く。
他の皆さんは?……はっと、辺りを見まわす。
…幸いどうやら、皆、たいした事はなさそうだった。
羽也は静かに落した盾をそっと持ちなおした。同時に刀も。…刀を握るのはどれくらいぶりか。人を殺められる道具としてこれを持たなくなってからだいぶ経つ。もちろん使い方を忘れているわけでは無いが。
この刀はそれ自体が魔力を持っているかのようによく手になじんだ。まるで、その先にいる“彼”を感じさせるかの様に。
(私などがお使いするのはかなりご不満でしょうが。……我慢してくださいね)
刀に語りかけ。きっ、と前を見据える。
「行きますよ」
言うや、羽也はヘリの正面のドアを開ける。そして、真理と並んで二人はゆっくりと歩き出す。
それは銃で狙いをつけられるのに十分な速さでもあった。
一斉に放たれる銃弾。その狙いは寸分たがわず、羽也と真理に命中するはずだった。
盾が翻る。透明無色の盾が、ことごとく弾をはじく。左手、右手、左手と持ち替えて。或いは、盾を回転させて。
弾が切れる一瞬、その瞬間。
真理は、羽也の背後から敵に向かって踊り出ていた。柱に向かって壁を蹴り……刀が、刃が舞う。
その舞いのあと、残されるのは血煙と、真理の凄絶なる薄い微笑。
「先に行きなさい!」
真理が叫ぶ。
「…ここは、私達でなんとかします!ですから!」
銃弾を、防ぎつつ羽也も続けて声を張り上げる。
……皆が、行くのを確認してから。
思考トリガーで、オーヴァドライブを起動。それが、合図。羽也がはじめて刀に手をかけ…抜いた。
真理の様子を気遣いつつ、そして、援護しつつ。自らも攻撃に転じる……。

 [ No.320 ]


決別の夜

Handle : “スピードキング”サンタナ   Date : 99/10/31(Sun) 23:47
Style : チャクラ◎・カブトワリ・カゼ●   Aj/Jender : 32歳/男
Post : 大災厄史編纂室


風が二人の間を吹き抜けていく。
ウェズリィは数メートルの距離を置いて自分と対峙しているかつての友の顔をあらためて見た。
昔、どんな時にもそこにあり、自分を(口に出した事なぞ一度もなかったが)慰めてくれた明るい笑みはもうなかった。
今、そこには薄寒いまでに感情の欠落したうつろな表情があるだけだった。
まるで死人の顔のようだ。
ウェズはそう感じた。おそらく今の自分も同じ顔をしているに違いない。
と・・・
「こんな時がいつか来ると思っていた。」
サンタナが抑揚のない声で言った。
「いつかこの狂ったダンスが終わる時が来ると・・・」
彼の言葉を聞いていたくなかった、忘れていた過去を呼び覚ましたくはなかった。
自らの決意を確かめるようにウェズは冷たく言い放った。
「自ら歩みを止めるものに、運命は手を差しのべない。おまえはオレが止めてやるよ。ブラザー。」
はじめて、柔らかな、そして何もかもをあきらめたような微笑を浮かべ、サンタナは答えた。
「おまえを殺すぜ、ウェズ。」
「そして、この悪夢を終わりにするんだ。」
それは、決別と宣告だった。
あの時、彼が自らの頭に銃口を突きつけ、引き金を引いたあの時に氷ついた時間が再び歩みだした。
こんどこそ、真の終局へと向かって。

動いたのは、二人同時だった。
ウェズリィは神速とも言える動きでライデンを抜くと迷わず三度トリガーを絞った。
しかし、目の前にサンタナの姿はすでにない。
刹那、背筋に冷たい感覚を憶え、ウェズリィが身をかがめた。
その頭上をサンタナの蹴りがゾッとするような風切音を残して駆け抜けていく。
続いて繰り出される連蹴を、屈んだ反動を生かし後方に飛んでかわすウェズ。
そのまま銃を撃った。
サンタナは倒立のような姿勢から蹴りを放ち、レッグガードで銃弾をはじいた。
再び対峙する二人。
予備動作がまったくなかった。
ウェズは内心、舌をまいた。
彼の踏み込みの早さは昔から知っていたが、今はソレを遙かに上回るスピードだった。
ほとんど瞬間移動と言える。
銃口を向けた瞬間には死角にいたのだ。
彼は金属製のレッグガードとローラーブレードに目をやった。
おそらく、アレはヤヌスと連動している一種のサイバーウェアなのだろう。
蹴り技に対して圧倒的な射程と破壊力があるように見えて、銃の動きは実に直線的だ。
その銃口の反応を上回るランダムな円移動によって間合いを詰め、必殺の蹴りを放つ。
「やっかいだな。」
タタタタタタタ
軽快なスタッカートを刻むアサルトライフルの銃弾をよけ、屋上の電飾の影に隠れながらウェズリィはそっと嘆息した。

 [ No.319 ]


闇色の翼の下で

Handle : “監視者”壬生(ミブ)   Date : 99/10/30(Sat) 23:33
Style : クグツ◎・チャクラ・カゲ●   Aj/Jender : 30歳代/男
Post : 大災厄史編纂室室長


わずか数分のフライトだった。
眼下には彼らの目的地である10階建てのビルが見える。
廃ビルとはいえ電源が生きているのか、屋上にビルの名を示すSTARの電飾が瞬いていた。
時刻は11時30分をまわっている。
その、新しい日へと変わるまでのわずか数十分の時間で、彼らが短い道程の間に固めた決意がためされようとしていた。
彼らを巻き込み、物語はフィナーレを迎えようとしている。
しかし、凶兆を示すように煌々と輝く満月に不吉な影を落とし、飛来する物体があった。
「まずいな・・・」
最初に気がついたのはシンジだった。
「ビルは目の前だっていうのに。」
我那覇が悔しそうに言った。
「何?」
真理が聞き返したその時だった。
ズズン
すさまじい振動がヘリを襲った。
「!」
「敵だ。」
イノーマス製アーリマン無音戦闘ヘリ。
おそるべき猛禽が彼らの前方に立ちはだかっていた。
「クッ、一発もらっちまった。・・・でもなぜ無事なんだ?」
我那覇がカーゴルームを振り返る。
「さあ?」
来方がまるで緊張感を感じさせない様子で言った。
ほとんど消えかかっている壁の「交通安全」の文字を横目で見て、そっとため息をつく。
その様子から彼が何かしたのだろうと感じたが、今はそれについて考えている時でも頼っている時でもない。我那覇は、あらためて眼前の敵に目をやった。
汗ばむ手で操縦桿を握り直す。
機動性、戦闘力、全てを敵が上回っているのだ。
しかも、墜落はまのがれたとはいえ、先ほどのダメージは明らかにヘリの動きを鈍らせていた。
「何か、手は?手はないか?」
すばやくヘリを左右に旋回させ、相手の機銃の掃射をかわしながら我那覇は考えた。
「腕か?ダメだ相手もプロだ、性能の差をうめられるほどじゃあない。」
「じゃあ・・どうすれば。」
「我那覇さん、あきらめないで。・・女は度胸と言うじゃないですか。」
「何言ってんだか。」
モリーの声援に苦笑し、そして力強く頷いた。
「そうだね。女は度胸だ。」
「来方!」
「アンタのまじないはどのくらい保つ?」
「後、一発ってとこかな?」
彼女の決意を感じ取ったのか、来方がニヤリと笑った。
「いいかい?私が合図をしたら、めいっぱいガトリングガンのトリガーを引くんだよ。」
顔は前を向いたまま、傍らにへたりこんでいる若いパイロットに言った。
「は・・はいっ!」
返事をまたず、操縦桿を一気に倒す。ヘリは大きく弧を描くように旋回した。
しかし、相手はその動きにつられることなく、素早く機首を返すと機銃の掃射をやめ、とどめを刺すべくミサイル発射した。
「コレを待っていたんだ。」
我那覇は旋回をやめ、機首を相手の正面に向けた。
その眼前にミサイルが迫る。
「わあああああああ。」
若いパイロットの絶叫が断末魔の声のように響き、そして、爆炎と振動が再びヘリを包んだ。
アーリマンのパイロットが勝利を確信し、一瞬動きを止める。
その時。
炎の中からガトリングガンの銃口が鎌首をもたげる蛇のように、ゆっくりと起きあがった。
「!」
「今だ!」
我那覇の合図とともに無数の弾丸が正面からアーリマンのコックピットを撃ち抜く。
LU$Tの夜空にいくつもの閃光が瞬き、そしてヘリはいびつな螺旋を描きながら地上へと落下していった。
「やった。」
シンジが掌を拳で叩き喜びをあらわにした。
真理と羽也が顔を見合わせそっと胸をなでおろす。
「・・・・」
「どうしたんだい?腰でも抜けたの?」
沖がうつむいている来方を不審に思い、からかうように言った。
「無茶だよ・・いくらなんでもミサイルを真っ向から受けるなんて。」
来方が泣き笑いのような表情で顔を上げた。
「交通安全」の文字は1つ残らず消えている。
ガクン
術者の言葉を肯定するようにヘリが大きく傾いた。
そのまま、下方に、ビルの方向に落下していく。
「やっぱり、ちょっと無茶がすぎたかな。」
我那覇が渇いた笑いを漏らした。
今や、輸送ヘリの前面は、いびつな形に変形し、ガラスは粉々に砕けていた。
コクピットも半分以上が機能を停止し、残りの半分は警告を示す赤いランプで埋め尽くされている。
それでも、爆発四散しなかっただけ奇跡と言えた。
彼女自身も数カ所の裂傷と打撲を負っているようだ。
「しかたない・・・このまま降ろすよ。」
我那覇は痛みを堪えて再び操縦桿を握った。
その手にかすかな手応えを感じる。
そうしている内にも、ヘリはどんどん高度を下げていた。
「コレは“降ろす”ではなく、墜落すると言った方がいいのかも・・・」
モリーが以外と冷静な言葉を返す。
ただし、表情はひきつった笑いを浮かべていたが。
そして
彼らとその運命を乗せたヘリは終幕の場へ、10階建てのビルの中腹に激突した。
凄まじい轟音と共に、瓦礫とガラスの破片が雨のように地上に降りそそいだ。
・・・・・・・・・・・・・・
「来たか・・・」
廃ビルの中、振動を感じ壬生は呟いた。
「さて、“予定通り”サンタナもダンスのパートナーを見つけたようだな。」
「では、彼らにも盛大な歓迎を用意しなければならないな。」
・・・・・・・・・・・・・・・
「“頭”(ヘッド)だ、予定通りゲストが到着した。作戦に変更はない、ハンティングを開始しろ。作戦終了まで指示は“千眼(サウザンド・アイズ)”が出す。交信終了(アウト)。」
壬生の合図とともに、ビル内とその周辺に配置されていた実働部隊が、いっせいに行動を開始した。

 [ No.318 ]


光差す夜

Handle : “紅の瞳”秦 真理   Date : 99/10/30(Sat) 03:17
Style : Mistress◎Regger Katana●   Aj/Jender : 24/female
Post : N◎VA三合会


 中空の月。
無音のまま、眼下のまばゆい光を放つ街を飛ぶ、ダークグレイの軍用ヘリ。
その武器庫で真理は皮に似た材質の対弾繊維の体に密着するボディ・スーツを手に取り、着替え始める。
 ひとつずつ、武装を確認する。そうする事で今、自分が置かれている状況を改めて確認し、平静を保とうと。…表情のあまり浮かばない顔で真理はボディ・スーツを纏う。
 動きやすいボディ・スーツの上に、“カリテス”チャイナドレス、肩からフェイトコートをかけ、チェーンの止め金具で落ちないように止める。髪は上で邪魔にならないように結い上げる。
 武器の中から、投擲用にクリスタルナイフを数本、MP10と予備マガジン、レーザーナイフ。愛刀をボディ・スーツのベルトを通す部分で固定し、隠れ家から持参した、短剣型手榴弾と手榴弾を数個、フェイトコートに着ける。
 負傷した左腕は先程神楽に固定してもらい、クロックブーストを服用したことで、感覚が戻ってきていた…神経系への的確なダメージがきていたらしい…鈍い痛みが左腕に走る。僅かに顔をしかめると、もらった痛み止めを噛み砕く。
 クロックブーストの影響か、血が騒ぐのが分かる。自らが闘いへの予感に包まれていくのが分かる。
 軽く息を吐いて苦笑すると、真理は弥勒とテレスコープを手に取り、武器庫からカーゴルームへと向かった。

「先程は有難う、おかげで久しぶりに笑ったような気がするわ」
 漆黒の洋装─おかげでその紅の瞳が際立っている─に身を包んだ真理は、文字を書き終わった来方にそう、微笑みかける。隠れ家での彼の一言に真理はほほを綻ばせたのだ、その通りだと。
「貴方の一言のおかげで私の心も定まったわ。再優先すべきは、バージニアの保護だと…」
 そういって来方に微笑んだ、どこか…穏やかな笑み。
 来方の横に立ち、テレスコープで遥か彼方の目的のビルを覗くと、屋上にセスナと…人影がみっつ。小さな人影が走り出すのが見えた。
「バージニアは屋上にいるわね…それとお出迎えも…」
 見知った探偵と見知らぬ男、にらみ合ったまま動かぬ二人の姿を見、皆にそういうと真理は表情を引き締める。ゆっくりと、真理の纏う雰囲気が変貌していく─貴婦人から冷たき戦姫へと。
 テレスコープを離し、カーゴルームの面々を見つめる…闘いの場は、もうすぐだ。
「…恐らく足止めの為に、部隊を展開してくるとも考えられるわね。私は、奴らの“手足”をもぎとりにいくわ。羽也さん、援護をお願いできるかしら?」
 壁に寄りかかりながら凄絶な微笑を浮かべ、面々にそういうと神楽へと視線を向ける。自らが見出した闘い方はこうだと。壬生をしとめにいくのではなく、あくまでバージニアを迎えに行くために、露払いに徹すると。
「俺は目を・・・過去から俺達を射付ける両目に影を落としにゆくよ________真理さん」
 A-Killerに結線した神楽が、真理を見つめ返す。
 羽也へと視線を向ける、無言で真理に柔らかく微笑み返すと羽也はクリスタルウォールを手に取った。
「バージニアの元へと、皆さんは向かって頂けますか?私と羽也さんで、露払いをしますから。…美琴さん、バージニアを護って…あげて下さい」
 真理は一度だけ柔らかく微笑むと軽く美琴に頭を下げる…自分には出来ないかもしれないから……。
 ビル内部の構造データが、どうやら九条から連絡用に真理に手渡された、セキュリティ強化されたポケットロンに転送されてきた。その構造を面々へと見せ、そのポケットロンを沖へと手渡した。
「貴方が持っていて下さい。…私は屋上までは行かないつもりですから」
 そういって微笑むと、真理は遥か彼方にあるビルを─そこにいるであろうもの達を見つめながら、弥勒をかけ、一度だけ薄く笑った。
「“手足”をもがれた人間に何が出来るか…ある意味楽しみだわ。それに盛大なお出迎えがまってそうね」


靄の晴れつつある空に浮かぶ月は誰が為に光をそそぐのか。
遥か彼方にある星は、誰が為に輝きを放つのか。

光差す夜に、その光の向こうに何が待っているというのか?まだ…分からない。

 [ No.317 ]


ザンジュウケンと謎の情報

Handle : “バトロイド”斬銃拳   Date : 99/10/28(Thu) 01:45
Style : カタナ◎● カブトワリ チャクラ   Aj/Jender : 25歳/男性
Post : フリーランス/ソロ


無線機で謎の人物と会話する斬銃拳。
「おやおや・・・そちらへ戻りマシタか・・・」
場所は隠れ家である、とある安アパートの一室。
「なんだ、ではワタシというポーンは走り周らなくてよかったデスね・・・
いえいえ、すぐに戻りマスよ。スタート地点でよろしいのデスか?
・・・はい、はい、了解しましタ。ワタシも楽しみにしています・・・」
かちゃりと無線を切る斬銃拳。
そして部屋の隅に老いてったギターケースを手に取り部屋を出る。
「くっくっく・・・お仕事はまだまだこれから・・・デスよ」
斬銃拳、闇へと歩み出す。

 [ No.316 ]


凍てつく風の冷たさよ、お前は何を語るのか

Handle : ”無免許探偵”ウェズリィ   Date : 99/10/27(Wed) 14:36
Style : KABUTO,FATE,KABUTO-WARI◎●   Aj/Jender : 外見20代前半/Male
Post : ”Gunslinger”


「クソ野郎ならもう一人いるぜ」
 月光が照らし出す廃ビルの屋上。向かい合ったサンタナとヴァージニアの二人の元に、靴音をたてて誰かが歩み寄った。月の光が逆光になり二人には彼の表情を伺い知ることはできない。長いコートが作り出すさらなる長い影が二人の姿を包んでゆく。そして靴音は近づくにつれ大きく鋭さをましてゆく。
 やがて靴音はとまった。
「…久しぶり」
 サンタナが口を開く。
「昔話をしにきたぜ…」
 言いたいことは山ほどあった。聞きたいことも山ほどあった。しかし今の自分は拳銃を握りしめることしかできない。これでしか語ることはできないから。友として暮らしてきた月日よりも更なる長い月日が二人を分けたが故に、こうすることしかできなくなってしまった。
 そっとヴァージニアを手で押しやった。何かを促すように丁寧に。彼女が走り出すのを見計らって素早くサンタナとヴァージニアとの間に割り込んだ。
 じっと目を見つめる。かつての陽気な光は影を潜め、そこに満ちているのは哀しげな光だった。そこに写る自分の姿はあの時のまま何一つ変わっていないのに。殺人機械のまま、何一つ変わっていないのに。
 風が冷たさを増したように感じられた。

 [ No.315 ]


備え在れば、憂い無し

Handle : 来方 風土(きたかた かざと)   Date : 99/10/26(Tue) 23:05
Style : バサラ●・マヤカシ・チャクラ◎   Aj/Jender : 21歳/男
Post : フリーランス


風土は最後の一文字を書き上げると、その顔に笑みを浮かべる。
その視線の先には、交通安全と書かれた文字がヘリの壁に書き込まれていた。良く見れば壁の所々に、その文字は書き込まれている。一体それに何の意味があるのか、風土は一人うなずき窓の外を見る。
「お、見えてきた、見えてきた」
遥か先に、バージニアが現れたビルが見える。わずかな点しか見えないが、そこにはネオンの明かりでSTARと書かれていた。(ただしAの文字が消えているが)

 [ No.314 ]


月下の戦士

Handle : “スピードキング”サンタナ   Date : 99/10/26(Tue) 21:00
Style : チャクラ◎・カブトワリ・カゼ●   Aj/Jender : 32歳/男
Post : 大災厄史編纂室


月光が廃ビルの屋上をステージのように浮き上がらせていた。
「ここは、私がはじめて現れた場所ね・・」
フェンスに半ばめり込むようにとまっている愛機を見つめ、バージニアはひとりごちた。
セスナのまわりにあったゴミや瓦礫はかたづけられ、立ち入り禁止のテープが張り巡らされているが、それ以外は彼女がここを立ち去った時のままだった。
「さて・・・隠れていたホテルはどのへんなのかな?」
軽く深呼吸すると、彼女は真昼のようにまばゆい光を放つ、LU$Tの街なみに目をやった。
その時。
フェンスのところで何かが動いた。
彼女からは丁度、街の明かりが逆光になっていて見えにくいが、人のような影が動いている。
と、ソレは不意に立ち上がった。
大きい。
2メートル近い巨漢だ。
彼女に背を向けているのでよく解らないが、どうやら男性のように見えた。
上はタンクトップ、下はアーミーパンツのようなものをはいている。
その軽装がギリシア彫刻を思わせる均整のとれた肉体美を際立たせていた。
男は腰を落とした姿勢から回し蹴りを夜空に向けて放った。
そして体のバネを生かし、右左と交互に蹴り出す。一連の動作が、かなりゆっくりとしたものにもかかわらず、ムチのようにしなる蹴りは「ヒュッ、ヒュッ。」と小気味良い風切り音を響かせた。
短めのドレッドヘアがリズミカルに揺れる。
「綺麗・・・」
半ば惹きつけられるように、バージニアは素直にそう思った。
月明かりの元、舞いのように繰り返される男の演舞はこの硬質な街にあって、どこか懐かしい自然の匂いがした。
どれくらいそうしていただろうか?
男は自分のコンディションを確認するかのように、念入りに一連の動作を繰り返し、やがてゆっくりと静止した。
3メートルほどの距離をおいて、丁度バージニアと向き合う形になった。
南米の太陽を想わせるライトブラウンの瞳が彼女をまっすぐ見つめる。
「気がついたんだな。怪我はないか?」
無骨な外見からは意外なほど若く、明るい声に彼女の緊張がほぐれた。
「大丈夫・・心配してくれてありがとう。私・・バージニア・ヴァレンタイン。」
「知ってるよ。オレはサンタナだ。」
男、サンタナはそう言って人懐こい笑みを浮かべた。
「サンタナ?変わった名前ね。それに私の事を知ってるの?」
少女の面に刹那、当惑が現れるがすぐに何かを思いついたように表情を輝かせた。
「そうか。あの人達の・・モリー達の友達なのね。それとも、え・・ええとイ・・イワサキの人かな?とにかく、よろしくね。」
生来の明るさも手伝ってか、すっかりうちとけたように右手をさしだす。
しかし、黒人の青年は哀しげに差し出された手をしばし見つめると、まるでまぶしいものから目を背けるように先ほど彼が立ち上がった場所へと歩いていった。
「?」
そして、そこに放り出してあった巨大なトランクを手に取り、慣れた様子でロックをはずした。
そこには金属製のレッグガードがついた大型のローラーブレイドが納められていた。
見るとフェンスにはアサルトライフルが二挺立てかけられている。
「え・・あの・・ごめんね。私って遠慮がなくって。何か気にさわったのなら謝るわ。」
完全に彼女の存在を無視したようにもくもくと装備を身につけるサンタナに戸惑い、ひたすらバージニアは謝った。
その手がピタリと止まる。
先ほど暖かでやさしそうな笑みを見せた彼とは別人のような、大きな哀しみを秘めた瞳が彼女を見た。
「違うんだ、アンタは何も悪くない。・・・悪いのは、オレの方さ。」
「え?」
そして、一語一語ゆっくりと、まるで自らの大切な何かと決別するかのように彼は言った。
「オレはアンタを追っている側の人間、大災厄編纂室のエージェントだ。」
「そして、バージニア。アンタの大切な人達を殺しに来たクソ野郎なのさ。」
沈黙が・・
彼女が越えて来た年月に勝る重みを持った沈黙のみが、あたりに満ちた。

 [ No.313 ]


壊れかかった悲しみに

Handle : : ”無免許探偵”ウェズリィ   Date : 99/10/24(Sun) 12:48
Style : KABUTO,FATE,KABUTO-WARI◎●   Aj/Jender : 2?/Male
Post : 過去からの手紙


『YO!なに不機嫌そうな顔しているんだ』
 その男に始めて出会った時、ひどく喧しい男だと感じた。
『……別に……』
 自分と始めて出会った時、ひどく剣呑な男だと感じたと言われたことがある。
 コンビを組んで戦うことになった二人の性格は出会ったときからまるで正反対だった。
 だからこそかなりの成果をあげられたのだとウェズは今でも思っている。
 始めて出会った時、2人合わせて32歳。32と言えば立派な大人だった。

 ”スピードキング”サンタナは2メートル近い堂々とした体格のドレッドヘアーの黒人だった。若さ故かひどく喧しくペラペラと人に話し掛け、その口調にみなが閉口することもしばしばだった。あの頃…陰惨な戦争が繰り返されていたミトラスの戦線で傭兵として二人は出会った。
 今生きているとしたら恐らく32歳になっているだろう。
 しかしそれはあり得ないと今まで思っていた。先に何処かで待っていてくれているのだと思っていた。何処かといったところで答えようがないが。何故なら自分は彼の死に立ち会っているのだから。

 石榴のように弾け飛んだ何か。
 飛び散った紅色の何かと、崩れ落ちた黒い身体。
 飛び散った紅色が自分の頬を染めていった感触は今でも思い起こせる。

 ミトラス戦争時は数多くの傭兵部隊が暗躍していた。作戦における彼らの重要性が急激に上昇しているのに目を付けた軍部は彼らで編成されたこの強化特殊部隊を作り上げることになった。空挺、奇襲、支援、守備など様々な作戦に投入が可能であり、しかも最小限の組織で最大限の戦果を挙げる組織を。そのほぼ不可能と思われた目的の為にエキスパートのみが集められた。狙撃、格闘技、ウォーカー、パンツァー、作戦立案、ボディーガード…etc。
 彼らは後に『悪魔の部隊(デヴィルズ・ブリゲート)』と呼ばれ、多くの兵士達を震え上がらせることになった。常に少数精鋭で任務を遂行し、しかも実戦参加から数カ月で驚異的な戦果を挙げていく。そして彼らの恐怖の名前を決定付けたのは作戦行動におけるその残虐性だった。非戦闘員や一般の民間人、更には味方からも同部隊の作戦行動が原因とみられる犠牲者が続出した。
 ウェズもサンタナもそこで戦場の日々を暮らしていたのだった。

 サンタナは恐るべき体術の使い手だった。ブラジルで手が使用できない多くの奴隷が編み出したと言われる『カポエラ』を幼くして習得し、格闘技では他の誰にも負けたことがなかった。ウェズも初めて会って少し後に実践訓練で手ひどい目に会ったことがあった。恐ろしい速度で突っ込んでくると内懐から素早い蹴りを仕掛けてくるのだ。辛うじて慣れ親しんだ拳銃の早撃ちで相打ちに持ちこんだとき、ウェズはサンタナとだけは戦うまいと決意した。彼も同様だったのだろう。それから後はしばしば作戦行動をともにするようになった。
 獲物は大型のアサルトライフルを好み、その無尽蔵の体力と機動力をいかして、敵の目を惹きつけ、攪乱し、ウェズが狙撃するというコンビネーションをとっていた。

『その曲いい曲だな。なんていうんだ、ウェズ』
『…なんなのだろう。俺にもよく分からない。ただ感じるままに吹いているだけだな。気障なことを言ってしまえば』
『全然似合わないな、そんなくさいセリフ…』
 そういえば。ウェズがサンタナのことを思い出すときある光景が必ず浮かぶ。サンタナはウェズが時折吹くブルースハープの音色がたいそう気に入っていたらしい。暇潰しにたびたびハープの音色に合わせて口笛を吹いていたことがあった。あの曲はなんと言う曲だったのだろうか・・・。
『その曲いい曲だな。俺が死んだとき、もう一度聞かせてくれないか。この歌を』
『ああ。生きていればな』
『…いきていろよ』
『…わからないさ』

 サンタナの死は突然だった。ある日、仲間同志が殺し合いを始めたのだ。理由は今でもわからない。皆が皆血走った目を向け合い、銃口と刃を向け合った。駐屯地は誰かが放った炎に包まれた。ウェズも何人殺したかわからなかった。いや、自分たちの身に何が起こっているのかすらも分からなかった。ただ生き残るために昨日まで笑い会っていた仲間を殺さなければならなかった。
 そして銃弾は切れた。
 次の瞬間銃口が見えた。大型のアサルトライフル。友だと思っていた男が血走った目を自分に向けていた。何も考えなかった。ただ楽になるのだということが分かっただけだ。しかしその次の瞬間、サンタナはウェズの目の前自らの頭を撃ち抜いて自殺した。

 石榴のように弾け飛んだ何か。
 飛び散った紅色の何かと、崩れ落ちた黒い身体。
 飛び散った紅色が自分の頬を染めていった感触は今でも思い起こせる。

 ウェズは歩みを速めた。もうじきカーニバルはフィナーレを迎えるだろう。カーニバルのフィナーレは火を囲んでの踊りに相場が決まっている。踊りきったものだけが生き残れる退屈極まりない踊りがもうじき始まるのだ。
 彼は左手に握り締めた古ぼけたジッポを使った。澄んだ金属音がした。霧が再び月明かりのみが輝く暗い夜空にかかり出した。吐き出した煙が、ひどく不安げな形を作り風に吹き飛ばされていく。煙草が嫌いになりそうだった。何故かのどにひっかかる。毀(こわ)れかかった友情の匂いがした。

 

 [ No.312 ]


ツキニ。

Handle : “ボディトーク”火鷹 遊衣   Date : 99/10/24(Sun) 01:04
Style : マネキン◎トーキー=トーキー●   Aj/Jender : 17歳/女
Post : フリーの記者


月に行きたいのだと、彼女は言った。

神狩の小脇に抱えられた遊衣は、その異形にめげずブーイングする。
「ちょっと〜、女の子の抱き方ってそうじゃないじゃない?」
唇を尖らせて抗議する。
その言葉に鬼は…良くはわからなかったが、苦笑した気がした。
長い手が、遊衣の体を抱きなおす。
体が安定したところで(といってもすごい勢いで『跳んで』いるので、そう安定しているのでもないが)ふと、彼女の“幸運の星”の事を考える。

月に行きたい、と。
遊衣は、だから本当に連れて行ってあげたいと願ったのだ。
惑星の月でも、オーサカMOONでも付き合ってやろうと思った。

きっともう一度会って、たくさん面白い事を教えてあげよう。
同い年の女の子がするような……ショッピングとか、話題のお店に並んだり……そんな無駄で貴重な時間を彼女たちと過ごしたい、と思った。

さあ……決戦はすぐそこに、ある。

http://village.infoweb.ne.jp/~fwkw6358/yui.htm [ No.311 ]


明日への飛翔

Handle : 『親愛なる天使』モリー美琴   Date : 99/10/23(Sat) 08:39
Style : カブト=カブト=カブト   Aj/Jender : 14/女性
Post : フリーランス


 周りの空気を感じて、美琴の険しかった表情もゆるんだ。
「バーニィを迎えに行くんでしょ。………一緒に月に行く約束したんだもんね」
彼女を待っている人がこんなにもいる………飛ぶ前の彼女は感じていたのだろうか………。美琴はバーニィの顔を思い浮かべた。
「あたしも連れていって」
美琴は真剣な眼差しで周りの者を見つめた。彼らはその言葉を待っていたのか、小さく笑ってうなずいてくれた。

 そして、ヘリに乗り込み、自分の持っている物を確認して、できること、そして、今自分がやらなくてはいけないことを考える………。

 [ No.310 ]


sleigh and straight ?

Handle : ”Sworn Sword”九条 誠   Date : 99/10/22(Fri) 22:28
Style : エグゼク◎●、カリスマ、レッガー   Aj/Jender : male/30代前半
Post : イワサキ


飛んでいくヘリを見送る。彼らを乗せ決戦の地へ。
彼は向き直り、そして自分たちの部下へと命令した。
「テレンス・アンダーソンへと繋ぎます。そのための準備を」
繋ぐ理由は二つ。自分の聞きたいことが幾つかと秦からの依頼。
やや待つ、その間に沖と秦から渡された書類の内容を読む。
ふむ、とうなり。少し考える。その間に連絡設備が整う。
そして、自分専用のナンバーへとダイアルした……。

 [ No.309 ]


堕天使を見つめるもの

Handle : “銀狼” 神楽 愼司   Date : 99/10/21(Thu) 21:04
Style : カゼ◎、カゼ●、タタラ   Aj/Jender : 推定年齢26 / 男性
Post : シルバーレスキュー グラウンドスタッフ


「楽園を追われた天使は堕天使になるしかなかったそうだよ・・・真理さん」
シンジは煙草をポケットから取り出し、さしつかえなければと先ほど小さく呟いた真理の双眸を見つめながら答えた。
「東京悪夢ってチームでつるんで走りもしたっけ。だが俺が走っていたその先に見たものは________________」
僅かに揺れるカーゴルームの中に固定したA-Killerのカウルに手を振れる。
「死だ。 そう、紛れも無く、あれは死だったよ」

「迎えにいきましょう。バージニアを。私達に残された時間は余りにも少ないようですから」
壁から離れ、ワイヤーで固定されたA-Killerに寄りかかるシンジを促す様に真理も窓を離れる。
「運ばなきゃならないものがあった。連れて行かなきゃならない人がいた。だがその行く末の小さくて細い道のたもとに、奴はいた」
シンジはゆっくりと人差し指と親指で懐から弾丸を取り出すとそれを真理の目の前に翳す。
「ブレットタイムってニューロタング、知ってるかい?」
真理が首を揺らす。
シンジはじっと弾丸を見つめながらそれをゆっくりと自分の手元から真理の身体へと飛んで行くといった動作を見せる。
「こいつが飛び出して的を撃ち抜くまでの瞬きよりも早い瞬間さ。あの壬生って男は俺のチームをそんな時間で壊滅させたって言ってもいい」
シンジは漸く気付いた様に口元の煙草に火を付けながら言葉を続けた。
俺もクーリエだ。いろんな奴を見てきたが、あいつだけは別だ。出来うる事なら霧の向うにそのまま消えてて欲しい・・・荒ぶる事無く。 だが霧から出て来た以上、それ相応の現実ってやつを________奴に伝えてやる。
シンジは凄絶な笑みで口元を歪め、カウルを指で叩き、カーゴルームに立つ者達に視線を投げる。
「俺が踊りつづけたダンスも、今度で終わりにする」
「結末にはまだ早い」玩具の様にカーゴに立ち並ぶ武器に手を振れながら、シンジの雇い主の一人、九条 誠が微笑む。
「私の踊るダンスが終わるのはまだまだ先の話さ」
一瞬自分のいる状況を忘れる様な自信に満ちた微笑みに肩が緩む。
飛び立つ前に部屋での男の言葉がシンジの中で首を擡げて生き返ってくる。
それを見透かしたかの様にサンダーボルトのスコープを調整しながら我那覇が静かに笑う。族と言う時間を走ったLadyViorettとは何処かでリズムが合うのだろう。シンジは壬生の言うきりを支える石の下に眠る、今は亡き同僚達の面影を見た様な気がした。
「では我々の行く先は?」
部屋に女の声が響く。
真里が悪戯の浮かぶ小さな笑顔で九条を見つめ皆を見つめ、ゆっくりとシンジに振り返った。
まいったなと両手を挙げ、シンジは真理とカーゴルームのメンツを見つめた。

「SRの神楽愼司だ、宜しく頼む」
シンジは寄りかかるA-Killerの搭載電源を入れ、自らを結線した。

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.308 ]


別働部隊

Handle : “疾駆の狩人”神狩裕也   Date : 99/10/21(Thu) 00:07
Style : チャクラ◎、カゲ、ヒルコ●   Aj/Jender : 23/男
Post : 狩人


「ロボタク?そんなものでは間に合わないだろうな」
火鷹にそう答え、楽しそうに口元を歪める。
どうやら隠れ家の方でも何らかの動きが始まったようだ。向かう場所が場所だけに、おそらく空から動くつもりだろう・・・となるとヘリか何かだろうか?
「別働隊を用意するのは戦術上では初歩中の初歩だ。俺達がそれとなるとするか」
にやりと一笑。その直後・・・
ひょいっ
神狩は火鷹をいとも簡単に小脇に抱えあげた。戸惑う火鷹に
「忠告しておく。何を見ても驚くな。それと、今から“跳んで”いくことになる。振り落とされたくなければしっかり捕まれよ」
さらりとそれだけ告げ、精神を集中しだす。
“鬼”を再び呼び出すためだ・・・野生動物をも圧する運動能力を使えば、目的地まではそうかかるまい。
ばき、ばきばきっ・・・・全身の筋肉が盛り上がり、容姿が鬼のそれとなる。今日二度めの変化だ・・・それゆえ、先ほどよりはスムーズに変態が進む。
数秒後には、神狩は再び鬼と化していた。
「ヨし・・・イくゾっ!!」
咆哮と共に宙に跳躍する神狩と火鷹。一瞬後、その姿は闇夜へと消えていった・・・

 [ No.307 ]


明日への飛翔

Handle : イワサキ製軍用輸送ヘリ   Date : 99/10/20(Wed) 21:22
Style : ?   Aj/Jender : ?
Post : イワサキ


九条にうながされるまま、一同は隠れ家近くの空き地に移動した。
そこは、元は彼らが今までいたホテルと同じような建物があった場所だったが、数日まえ“偶然”おきた火事によって建物は全焼し、ちょうどヘリを一機隠すことが出来るスペースが空けられていた。
そこにぼんやりと闇から浮きでるように長方形の機体が姿を現した。
エージェントが用意した輸送ヘリは軍需産業の雄、イワサキの名に恥じぬ堂々としたものだった。
ヴィーグルどころか小型のウォーカーならゆうに運べそうな、イワサキ独特の戦車を連想させる威容は言うにおよばず、闇にとけ込むような艶のないダークグレーのボディはレーダーを吸収するステルス仕様であることは間違いなかった。
さらに驚くべきはその無音性だった。
小型の無音ヘリには若干劣るものの、これならすぐ頭上を通過してもソレと気付かれることはないだろう。
各々が企業という巨大な怪物の脅威をまざまざと実感していた。
そして、それは同時にこれから彼らが立ち向かわねばならない敵の力でもあったのだった。
様々な想いを胸に一同がヘリに乗り込んで行く。
「わぁ・・」
モリーが再び感嘆の声をあげた。
たいていの武器は揃えてある、と九条が言った事は決して嘘ではなかった。
それどころか、ひかえめであるとさえ言えた。
中はちょっとした武器庫だった。
重火器からハンドガン、ボディーアーマーとあらゆる装備が用意されていた。
刀剣類もオーソドックスなものは大体揃っている。
九条はまるで一流のシェフのように、両手を軽く開いて彼の協力者達に中を示した。
それぞれが、己の愛用の武器に加え、得物を物色し始める。
「いいですか?このヘリの武装はガトリングガンが一挺だけです、ですから離陸したらすぐOPSは切って下さい。」
コクピットでは我那覇が若いパイロットからこのヘリについてのレクチャーを受けている。
「いくら人目につきにくい場所とはいえ、いつまでもこうしているわけにはいきません。」
「そろそろ離陸しましょう。」
一同が頷く。
それを合図にハッチが閉じられ、ヘリは音も無く闇夜へとダイブしていった。

 [ No.306 ]


Get Set Ready?

Handle : ”LadyViorett”我那覇 美加   Date : 99/10/20(Wed) 01:40
Style : カブト◎=カゼ●=カブトワリ   Aj/Jender : 28/female
Post : フリーのカブト/元”麗韻暴”二代目頭の兼業主婦


真理が話をする中で美加はただ一人壁にもたれて、話を聞いていた。
彼女のコートの中の隠しポケットからサンダーボルトの部品を取り出し組み上げていく。

イワサキのクグツの提案、そして女探偵の話・・・

その話を聞きながら組み立てる。

「それに、みんな真剣に考え過ぎだよ。
可哀想なバージニアを助けて、邪魔する奴らをぶっ飛ばす。それでいいんじゃない、だろ?」

風土の言葉に対して美加の決意は固まった。
組み上げたサンダーボルトのサイトの様子を確認するように玄関の方に銃口をむける。
それを降ろして皆の方に向き直る。
「私の方も貴方達と一緒にいた方がいいですね。
私も"彼女を守る"依頼ですし、それにどなたが"あの子"を動かすのですか?」

そう言って九条の用意したヘリを一度見て彼女は微笑んだ。

 [ No.305 ]


ゲームの山場

Handle : 来方 風土(きたかた かざと)   Date : 99/10/19(Tue) 22:21
Style : バサラ●・マヤカシ・チャクラ◎   Aj/Jender : 21歳/男
Post : フリーランス


こちらを見つめる”紅の瞳”に対して、風土は肩を竦める。
「これから一番面白くなるってのに、こんな所でゲームを降りる気は無いよ」
そう言うと風土は、今まで身に着けていたエプロンを外し立ちあがる。黒を基調としたボディーアーマーを身に着けると、MP10とアームガード付きのファイティングナイフを腰のホルスターに収める。
「それに、みんな真剣に考え過ぎだよ。可哀想なバージニアを助けて、邪魔する奴らをぶっ飛ばす。それでいいんじゃない、だろ?」

 [ No.304 ]


天使の帰還

Handle : バージニア・ヴァレンタイン   Date : 99/10/19(Tue) 21:25
Style : マネキン◎●マネキン・ハイランダー   Aj/Jender : 17歳/女
Post : ?


「風の音がする。」
朦朧とした意識の中でバージニアはそう思った。
ゴウゴウと耳鳴りのような音をたてて風が鳴っている。
霞がかかったようなぼんやりとした気分だった。
肉体の感覚が曖昧で、ともすれば拡散しそうになる意識とともに自分という存在自体が空気に溶けてしまいそうだ。
私は死んでしまったの?
不吉な想いにとらわれ、彼女はおそるおそる目を開けた。
そして、耳鳴りの正体が風などではなく、膨大な量の水が流れる音だと知った。
光の大河。
暗闇の中をとてつもなく大きな光の河が流れている。
ソレがあまりに大きすぎるために距離感がつかめないが、どうやらバージニアは下に、つまりは河に向かって落下しているらしい。
このままあの光の奔流に飲まれて私は消えてしまうのだろうか?
それとも再びどことも知れぬ土地に流れ着くのだろうか?
短い間だったが濃密な時を共にすごした愛しい人達と再び出会う事もないのか・・・
“いやだ。”
突然、望郷にも似た感情が彼女の心をとらえた。
想いは衝撃となって波紋のように全身にしみとおり、意識にかかった靄をはらった。
曖昧だった体がしっかりとした質感を持ち始める。
「私はまだ立ち去るわけにはいかない。」
自分はまだ、見ず知らずの私のために闘ってくれた人達に「ありがとう」の一言も言ってはいない。
自分の事をほとんど語ってはいないのだ。
そして、何よりあの愛しい人達ともっともっと、時間を過ごしたいという想いが、漂うのみだった彼女の心にしっかりとした道標を示した。
人生の大半をすごした時間、時代ではなく、危険でそれでいて魅力的な街が、そして愛しい人達が彼女を呼んだのだ。
まるで水の中にいるように彼女の手が大気を掴んだ。
いくべき方向が解る。
「戻ろう、あの人達のところへ。」
天使は頭上を見上げた。
そして還って行く。
事故でも偶然でもなく、今度こそ自分の意思で。
・・・・・・・・・・・・・
そして、彼女は再び目を覚ました。
彼女が愛してやまない月光の元、災厄の街に再び天使が舞い降りた。
側には、フェンスになかば機体を埋めた、スカイブルーのセスナが主人の帰還をたたえていた。

 [ No.303 ]


選択肢

Handle : “薄汚れた鑑札”沖 直海   Date : 99/10/19(Tue) 15:59
Style : フェイト◎カブト●レッガー   Aj/Jender : 24/女性
Post : フリーランス


・・・九条の提案。
それを聞いて、沖はあの書類を渡すべき時が今である事を悟る。
ふところから小さな封筒を取り出し、椅子の真理に手渡す。
いぶかしげな彼女に、封等を空けるように促し・・・

中の書類に目を通した真理が、一瞬目を見開いた。
そして灰皿に手を伸ばし、その紙片に火をつける。

・・・それでいい、と、沖は思う。
未来は分からないから。
今、燃え落ちた未来を成就させるために。
「行きましょうか?真理さん?」

http://village.infoweb.ne.jp/~fwje8355/okimasami.htm [ No.302 ]


そして…

Handle : 羽也・バートン   Date : 99/10/19(Tue) 01:16
Style : ミストレス◎カブト=カブト●   Aj/Jender : 26歳/女性
Post : フリーランス


身体中の細胞が目覚めゆく。
無言で渡された剣が羽也を変える。剣はしっくりと手になじんだ。まるで、それ自身が魔力をもっているかのように。
(“これ”は、アレックスさんの…?)
真理はなにも言わないが、この細工は恐らく死の卿のもの。
(…すみません、しばらくお借りいたします…)
剣を見つめ、剣とその先にいる剣の主―死の卿―に向かって、頭を下げる。
――それを受け取った事による、覚悟。

“覚悟”を問う紅の戦姫に、それを自分に問うのは無用だとばかりに彼女と目が合ったほんの一瞬の間だけ羽也は微笑を深める。
…それだけで、充分だった。戦姫に自らの意思を伝えるのには。
そして……。

 [ No.301 ]


月光

Handle : “監視者”壬生   Date : 99/10/18(Mon) 23:05
Style : クグツ◎・チャクラ・カゲ●   Aj/Jender : 30代/男
Post : 日本軍大災厄史編纂室 室長


殺気が物理的な力を持ってせめぎ合っているようだった。
お互いにまったくそんな素振りすらみせてはいなかった、むしろ自然体と言ってよいほどだ。しかし、ある種のプロフェッショナルが無意識の内に身に纏うオーラのようなものが、互いのテリトリーを浸食しあっているのだ。
キャノピー越しにガンスリンガーと堕天使が視線をかわす。
「良い夜だな。死人でなくとも出歩きたくなるというものだ。」
壬生はまるで独り言のように静かに言うと、美しく、しかしどこか禍々しい光りをたたえ輝く満月を見上げた。
「真円の月光には魔を払う力があるというぜ。」
視線をそらさぬまま、ウェズが言った。
「私には効かないようだね。」
B−MAXのキャノピーが音もなく開き、霧の守護者はまるで眠りから目覚めた吸血鬼のようにコフィンから身を起こした。
キン
ノスフェラトゥが軽く指を打ち鳴らすと、澄んだ金属音とともに探偵のタバコに小さな火が灯る。
「ありがたいね。」
芝居がかった仕草で礼を言う探偵を無表情に見返しながら、壬生が口を開く。
「月光の元、霧が払われ、真実が姿を現す・・・君が組織についてかぎまわっている事は知っていたよ。」
「だが、それは運が良かったわけでも君の力のおかげでもない。我々が手をださなかった、ただそれだけの事だ。」
グラスを外し、壬生の漆黒の瞳がウェズを射抜くように見た。
「真実を、この手に掴む事がオレの仕事だ。依頼者の意思でもある。」
憶することなく、探偵が深淵を見据える。
堕天使の口元が皮肉気に歪められた。
人の心を探る堕天使の微笑。
「“彼女”には気の毒な事をした。」
ウェズは動じない。死人にウェットな感情などないのだ。
しかし、この奥底からこみ上げてくるものはなんだ?
右手がなじみ深い黒金の感触をもとめ空をかいた。
まるで暗闇で光を求めるように。
「あの少女が鍵であったのなら良かったのだが・・適正者でないものには耐えられんよ。」
「もちろん、アラストールを諦めたわけではない・・・アレは確かに彼の血を引くものだ。」
「しかし・・・プロジェクトはバージニアこそが鍵であると信じている。」
「何が言いたい?」
ウェズがややかすれた声で問うた。
「私の元に来い、ウェズリィ。サンタナのように・・おまえはこちら側の人間だ。」
「サンタナ?・・・ヤツが、まさか生きていたのか・・・」
はじめて探偵の、いや、ガンスリンガーの鉄の自制心に陰りが見えた。
「今は我々のエージェントの一人だ。」
しずかにキャノピーが閉まるのをウェズは黙ってみつめていた。
彼の心に共に地獄を駆け抜けた戦友の顔が蘇る。
「私を失望させるなよ、ガンスリンガー。」
B−MAXの流線型のボディが闇に溶けるように消えて行くまで、彼は微動だにしなかった。

 [ No.300 ]


テンシノアトヲ。

Handle : “ボディトーク”火鷹遊衣   Date : 99/10/18(Mon) 13:29
Style : マネキン◎トーキー=トーキー●   Aj/Jender : 17歳/女
Post : フリーの記者


「あいにくと臆病とかとは無縁でね」

遊衣は、非常事態にもかかわらず艶やかに微笑んで言った。
テーブルの上のクリスを受け取って自分の情報端末に差し込む。
次々と映し出される情報を確認しながら、遊衣はとっとと席を立った。
そうして協力要請を申し出たエグゼクに、ウィンク。
「あたしさあ〜…純粋に自分の興味で動いてんの。後は彼女への好意?だから、協力と呼べる協力になんないかも知れないけど」
と。
彼が、それでも構わない、という表情をしたのを見て取って、踵を返した。
電話のダイヤルを叩きながら、一人外に出る。

……協力、してよね。

頼りになる先輩に、情報を送りつけ特番を組んでくれるように頼み込む。
もちろん、メインは現場からの実況中継。
視聴率を取れなきゃ、本当に自分に才能がないと言う事だ。
「ま、なんとかなるでしょ」
一言言って電話を切ったところで、走り出そうとして……
「うひゃっ」
目の前に現れた男に激突しそうになって急ブレーキを踏んだためにけっ躓いた。

「ふふふ、なぜそんなに慌てている?どうやら何かあったようだが、とりあえず話してみろ」
「…あんた…」
意外に優しい手つきで助け起こしてくれる神狩に遊衣は、ちょっと考えてから、知ってることを話すことにした。
「……というわけで、ロボタクでも拾ってだね…」
そこまで言った所で、遊衣は、世にも珍しい神狩の楽しそうな笑顔を目撃してしまったのであった。

 [ No.299 ]


悪魔

Handle : ”無免許探偵”ウェズリィ   Date : 99/10/18(Mon) 11:32
Style : KABUTO,FATE◎,KABUTO-WARI●   Aj/Jender : 2?/Male
Post : Freelans


 ビルの屋上に吹く風は何故か冷たく感じた。ここは欲望の街。向かい岸に眩い光を体中に帯びて横たわる街と共に人々には常春の都と謳われているはずなのに、何故かここに吹く風はいつも冷たく感じられる。先ほど火を付けたしけた煙草も吸い終わる。彼は吸い殻を軽く道ばたに吐き捨てると荷物を手早く片づけ、足を空の上のささやかな場所から再び薄汚れた地上へと向けた。
 そろそろ”姫”は無事に仲間の所に着いただろうか。彼女を運ぶ”銀狼”の腕が噂通りならばウェズがわざと残した残りの追手をも振りきってまんまと逃走したであろう。手加減したのは事故を装ってうち倒すには半数程度の損害で十分だと判断したからだ。本気で叩けば全滅も容易だが、それでは”姫”の為にはならぬと依頼人から念を押されていた。この件は彼女自身が決め、彼女自身が行動し、彼女自身が結果を受け止めなければならないのだ。

『そういうものかねぇ。親心というものは…。俺にはよくわかんねぇよ。大人』
『”あれ”もそろそろ親離れせねばならぬでな。この件はいい機会というわけだよ。君にもいずれ迎えるときが来るのだよ、ウェズ。否が応でも受け入れなければいけない』
『仮にそうだとしてもよりによってこの件に関わらせるかね、あんた。まぁ”姫”の性分なら、真実を知っていても巻き込まれれば行かざるを得ないだろうな。ましてやこの状況では…』
『だから君に頼んだのだよ、”Gunslinger”』
『”Gunslinger”は既に死んだ。たった一人で40機以上のウォーカーを破壊し何百人もの人を殺してきたが、10年以上も前ミトラスの戦場で炎に焼かれて地中に葬り去られたと聞いた』
『なにを今さら。言い逃れはできんよ。そのミトラスの地中からたったニ発の弾丸のために君を呼び寄せたわけだ。霧の向こうに蠢く悪魔を追い払うためには”悪魔”の力を借りるしかないからな。既に死んでいようと生きていようと悪魔は悪魔故に』
『”悪魔”は悪魔故に…か』
『それに君自身がこの件を追っていることは向こうも先刻承知のはずだ。霧の向こうからスカウトの手が伸びたという話も聞いたがね』
『さぁね。それは企業秘密(ないしょ)ということにしておくよ。依頼の件は請け負った。この前の貸しの為にたったニ発か…話は悪くはないが相手が悪いな』
『あきらめろ、ウェズ。死に場所を求めている野良犬を気取るのだったらそれらしく惨めにくたばるのも悪くはあるまい?』
『そうかもしれないな』
『ところで一つだけいいか?』
『なんだい?』
『君が今まで見てきた真実はどういうものだったか。後学のために教えてはくれないかな?』
『真実は常に残酷なものさ』

--------------------------------

 B-MAXのキャノピーを叩く音がした。
「ちょっと悪りぃ…火、貸してくれない?」
 壬生が外を見やると、そこには火のついていない煙草を口にくわえた探偵が
「…ほぉ…。今宵は珍しい。ミトラスにいるはずの死人が何故に欲望の街へ? ウェズ」
「夜の風は”死人”には冷たすぎてね」
 探偵は”悪魔”のほうをじっと見つめていた。

http://www.mietsu.tsu.mie.jp/keijun/trpg/nova/cast/index.html [ No.298 ]


sleigh trick

Handle : ”Sworn Sword”九条 誠   Date : 99/10/18(Mon) 01:09
Style : エグゼク◎●、カリスマ、レッガー   Aj/Jender : male/30代前半
Post : イワサキ


紅玉の姫君の到着。
最終局面への幕開け。
殆どの手札は出そろう。
窓の方へと歩き、向き直り室内の全員に対して問う。
「あなた方に一つ提案があります」
全員の反応を見る。
数瞬置いて。
「我々イワサキはパトロンの一人であるテレンス・アンダーソン氏の依頼を受けて動いています。どうです、協力しませんか?」
反応を見る、そして言葉を喋ろうとする前に言う
「彼らと戦うので有れば武器は用意します」
その言葉と共にヘリの爆音と風が室内へと入る。
「望むのでしたら、あなた方の思う場所へと連れていきましょう。霧の向こうからさしのべられる手をつかむ機会はそう多くないですよ。逸早ぶるのもかってですが時間無きことをくれぐれも忘れないように……」
そう、言い彼は返事を待った……

 [ No.297 ]


太陽に導かれしもの、星に集いしもの

Handle : “紅の瞳”秦 真理   Date : 99/10/17(Sun) 23:07
Style : Mistress◎Regger Katana●   Aj/Jender : 24/female
Post : N◎VA三合会


「国家が評価する現実とは、一体何なのでしょうね?」
もう出すべき言葉は尽くしたと言った顔で、真理が解らない程、僅かに双眸に涙を浮かべる。
「それを見つけるのは真理さん、今は貴方だよ」
 真理は迷うことなく、銀狼の言葉に答えた──

──自分に、いや、自分達に残された時間は、選択枝は余りにも少ない。
 来方の説明に答えながら、沖の用意した漆黒の“カリテス”チャイナドレス、感覚が戻るどころか動きもしない左腕を通せないため、肩からかけたフェイトコートに手早く着替え、ここに置いていた大陸の装飾を施した愛刀をたずさえた真理は、髪を結い上げ少しでも疲れた体と精神を休めるため、深く椅子に身を沈めて目を閉じた。

 時間跳躍能力者は大抵は本人以外の外的な要因─自然現象─によるところが多い。
ただ、バージニアから検出されたエネルギーが余りにも大きかったため、様々な組織に狙われたのだ。
沖の簡単な説明を聞きながらおぼろげながらに真理は思う。
─バージニアが消えた瞬間、彼女は自分の夢を語っていた。そして、皆で月に行きたいと。
「帰りたいという気持ちと世話になった私達を置いていけないという気持ち、二つの気持ちのせめぎあいとセスナという外的要因。それが彼女を飛ばしてしまったかもしれないわね…推論にすぎないのだけど」
 目を閉じたまま、天使の痛いほどの気持ちを考え、真理は深く、ため息をついた。

 千早とイワサキ、イワサキのパトロンたるアンダーソン、彼が依頼したNIK SSS、ナイトワーデン。
 狙われるバージニアの能力。
 その名目と異なる行動を取る、日本軍大災厄編纂室とウェズリィが追っていた一年前の事件。
 編纂室に敵対するような行動を取る(と沖が推測した)ゴードン・マクマソン千早統括専務。
そして──フェニックス・プロジェクト。
 沖が、簡潔にまとめた説明を区切り、まるで眠れる女帝の如く、椅子に深く腰掛け、瞳を閉じた真理に目を向けた。 しんと静まり返った部屋の空気が、女帝の言葉を待っている。
 真理はうっすらと閉じていた瞳を空け、呟くように言葉を紡ぐ、冷たく抑制された口調で。
「バージニアを護りたいというのなら、現時点での敵は─日本軍大災厄編纂室…」
 様々な瞳、様々な顔が真理を見ていた。知っている顔、初めて見る顔、色々だ。
 少女を巡る数奇な運命に導かれて、ここに集ったもの達の顔。
「…いえ、その背後にあるもの…フェニックス・プロジェクト。それが何を示すのか、なぜ彼らがバージニアを追うのかは私にも分かりません」
 慎重に言葉を選んで、真理はすべての人間の瞳を見据えた。
「おそらく、バージニアをめぐる闘いののちも彼らとの闘いは終わりません。深き深淵の先に踏み出すことになるでしょう……バージニアを追うということは間違いなく彼らの目指すものと当たることになるのですから」
 そうでなければ、室長を名乗るあの堕天使が、自ら現れまい。湧き上がる感情を押さえつけて奥歯をかみ締め、真理は言葉を続ける。
「室長を名乗る、壬生という男が私達の前に現れました。そして…死の卿が重傷を負い、銀狼さんの手でSRに収容されました、それほどの相手です。…化け物ともいっていい。全てを消し去ってきた霧に潜む悪魔…」
 無言で壁に寄りかかる、銀狼を見やり、真理は真剣なまなざしで言う。
「おそらく、今が最後の選択でしょう、バージニアを救いにいくか、すべてを忘れてまどろむか」
 再び目を閉じた真理は思う。……愚問だ、と。それならはじめからここにはいまい。
 それでも真理は聞かねばならなかった、自らが道をいくゆえに。あの少女を迎えに行くために。
 扉を選択するのは、ここにいる人々なのだから。
 太陽にかき消されようとしている星─バージニアの元に集いしもの達なのだから。
 様々にどんな思惑があるにせよ……。
「私は征きます、どんな現実が待っているとしても」
 再び目をひらいた真理は、力強く決意を秘めた口調で言い切った。
──銀狼の言葉に真理はこういったのだ。「たとえ深淵の先、霧に隠された現実がどんなものであろうとも、私は闘うわ」と。
 SC-8に落とした、壬生との会話データのすべてをクリスに落としてテーブルの上、火鷹の前に投げ落とす。
「…もし、貴方が必要ならこれを持っていって。闘うのなら、きっと武器になるはずよ」
 火鷹に薄く、深い微笑みを向けると、真理はゆっくりと立ち上がり窓のそばに立った。
──いつのまにか中華街は薄く靄がかかり、ぼやけた夜の街並みが外の世界を不可思議な雰囲気に包んでいる。星を巡る様々な勢力が争うには、中華街は余りにも静かだ。
 まるで何かを恐れるように。
 月がうっすらと靄につつまれ、虹を映し出していた。
「迎えにいきましょう。バージニアを。私達に残された時間は余りにも少ないようですから」
 窓から顔を皆の方へとむけ、真理はそういって微笑んだ。
 星に集うものたちが、真理を見ている。その決意を秘めた瞳を。
 潮流の中にちらばった星々を糸をもって、紡ぐような感覚を真理は覚えた。 

 もう一度だけ、真理は厳しい視線で、外の世界に目を向けた。見やるは中華街の街並み、LU$Tの白い巨塔、視線を動かし、N◎VAの方角を。
──この、集いしもの達が力をあわせれば、あるいは……。
この場にいなくても、その潮流に抗おうとするもの達が集えば、あるいは……。
昏く深い深淵さえ乗り越えて、征けるのかもしれない、いや、征けるのだと真理は思った。勝算は…ないわけではないのだと。

そして…動き出した歯車は終焉へと向け、加速されていった。

 [ No.296 ]


大いなる潮流─抗うもの

Handle : “紅の瞳”秦 真理   Date : 99/10/17(Sun) 21:47
Style : Mistress◎Regger Katana●   Aj/Jender : 24/female
Post : N◎VA三合会


 そして、魔弾は放たれた。爆音が聞こえ、真理は思わず背後を振り返る。
先程から、しつこく追いかけてきた”Fire Ball"が文字通り火の玉に変わったのだ。爆音に紛れて、遠くから聞こえるライフルの発射音を、真理は微かに聞いていた。
 そして─見た。抗うものが自分達だけで、ないことを。
「あと、一台まけて?しつこい男は嫌いなのよ」
 A-Killerを駆る銀狼の背に、自らの身を預けながら、真理は銀狼に囁く。
「__飛ばすゼ」
 銀狼はニヤリと不敵に笑い、一陣の疾風となり、駆け抜ける。
 予想だにしない、どこからかの魔弾の射手の攻撃に、一瞬ひるんだ”Fire Ball"を巻くにはそれで十分だった。
 SC-8の8番に編纂室を追う、ウェズリィからの暗号化し圧縮されたファイルが届いたのは、その時だった。

SRとしての銀狼の噂は真理も聞き及んでいた。LU$T三合会の楊大人と懇意にあることも。銀狼は信用できる、真理は確信していた。なぜなら自分達は間違いなく、目の前で流れていく街並みのように、大いなる潮流に飲み込まれ、抗おうとするもの達なのだから。
 真理を治療し、少しでも癒すように言葉をかけた銀狼に潜む深く哀しい感情を真理は痛いほど理解していた。自らも二つの想いがせめぎあい、深き深淵を植えつけたものであるがゆえに。
 支えてくれるものがいるのなら、自らもたちあがらればならないと、真理は唇をかみ締める。

 IANUSUに着信。少し警戒し出るが、それは僅かに泣きはらした美琴の顔。緊張を緩める。謝ることしか他に言葉が見つからず、再び半泣きになる美琴の姿に真理は、口の中が乾く感触を覚えた。
──美琴さんが謝るということは、バージニアがいなくなった!
 預けたポケットロンからの着信はなく、襲撃を受けたのであれば無事ではすむまい。
そして、見事なまでの引き際を見せたあの男は、これを予期していたのだろうか?
 一瞬目の前が真っ暗になり、身を固くした真理に気がつき、銀狼が少しだけ後ろを向く。
─焦るな!
自らが自らへと忠告する。焦り、動いてしまっては先程の二の舞だと。
「気持ちを切り替えなさい。まだ、あの子を護る手だてはあるはずよ?私はすぐ戻るから」
 自らの焦りを打ち払いながら、真理は美琴に真剣なまなざしでいった。
「…目的地は変わらないわ、急ぎましょう」
 天使を探す目的地はおぼろげながらにしか想像がつかず、二人でいったとしても─勝算は薄い。
 そう、冷めた思考で判断して真理は銀狼に微笑んだ。 

 タービン音がして、廃業したレンガ作りのホテル─真理が最近手配した隠れ家へと銀狼とともに到着した。先に着いていた羽也とカブト風の女性に会釈して真理は銀狼を誘う。待つべきもの達の所へ。
 羽也の言葉を聞き、真理は軽く微笑んで無言で死の卿の彗星剣を預けた。羽也の無言の覚悟を受け取って。言葉はいらなかった。
「…もし、さしつかえなければ、貴方の知ることを教えて頂けませんか?─霧の向こうに隠された現実に抗うもの達のために」
 他の人間に聞こえないように気を使って囁き、真理は決意を秘めたまなざしで銀狼を見やる。

そして──天使の消えた室内に、大いなる潮流に飲み込まれたもの達が集っていた。
それを真理は、おぼろげながらに見入っていた。天使に、星に集いしもの達を──

 [ No.295 ]


狩人の到着

Handle : “疾駆の狩人”神狩裕也   Date : 99/10/17(Sun) 19:07
Style : チャクラ◎、カゲ、ヒルコ●   Aj/Jender : 23/男
Post : 狩人


「そろそろだな・・・」
路地裏を疾走しつつ神狩が呟く。あのトーキーから指定された隠れ家はもう目前だ。
そこに誰が集まっているのか、何が行われているのかは全く知らない。知る必要がないからだ。自分の本能が、そこに行け、と告げてきている以上それに従うのみ。それに加え・・・
(ほほう・・・?)
軽く口元を歪める。
(どうやら俺はこの事件が気にかかっているらしい)
神狩にとって最も重視すべきものは自分の感情、そして本能。他に従うべきものなどありはしない。良くも悪くも自分には正直な男なのだ。気にかかるならとことんまでこの件に関わる、それがこの場合選ぶ道。ただそれだけの話だ。

隠れ家が見えてきた。意識を集中し、気配を探る・・・どうやら敵意を持つものは未だいないようだ。それより気になることがあった。ある種の違和感。先ほどまで”何か”がいたのだが、いまでは消えてしまった・・・そのような感じが漂っている。

と、突然、神狩の目の前に何かが飛び出してきた。慌てず軽く体を捻り、衝突を避ける。よくよく見ると飛び出してきたのはまだ若い女・・・あのトーキー、火鷹遊衣だ。
「ふふふ、なぜそんなに慌てている?どうやら何かあったようだが、とりあえず話してみろ」
飛び出してきた勢いでつんのめった火鷹を助け起こしつつ声をかける。鋭い眼光をたたえ、皮肉な笑みを浮かべたまま。

 [ No.294 ]


天使の消えた場所

Handle : “薄汚れた鑑札”沖 直海   Date : 99/10/17(Sun) 01:21
Style : フェイト◎カブト●レッガー   Aj/Jender : 24/女性
Post : フリーランス


バージニア・ヴァレンタインについての災厄前の記録。
音楽家の父アーネスト(指揮者)とマティルダ(ピアニスト)の長女。
弟が一人、マイケル。(災厄時病死を確認)
祖父はアメリカ空軍の軍人、彼女が17歳の時に演習中の事故で死亡。
セスナの事故により行方不明。事故現場からはセスナの残骸だけが発見された。

現在。
セスナによりヨコハマ中華街に降り立てし堕天使。
「災厄」の真実を知るものとされ、真実の隠蔽を図る日本軍大災厄史編纂室に追われる少女。
時間移動の能力者と目される人物。

そして。
さっきまで目の前で、まだ湯気の立つカップからスープを飲もうとして舌を火傷し掛けていた少女。
宇宙飛行士になって月へ行くのと、瞳を輝かせていた少女。
優しい雰囲気の中にいた、そしてこれからもいたであろう少女。

目の前から消えた天使。

真理から警告は受けていた。
早期の行動と警戒の警告。しかし、投げられた賽自体が消え失せる事を、誰が予測できただろう?
呆然としたのは一瞬で、沖はすぐさま気持ちを切り替える。
自分に、今、できる事。するべき事へと。

しんと静まり返り、モリーの啜り泣きだけが響く室内で、最初に口を開いたのは九条だった。
そして沖にささやく。
「幾つか調べて貰えませんか? アンダーソンとその背景について」
「・・・!」
アンダーソン、今回の依頼人。
もともと、沖はバージニアにかけられた賞金目当てに彼女を追っていた。
しかしながら、バージニアを追ううち、大災厄史編纂室が動いている事を知り、、あるプロジェクト名が浮かび上がり・・・
誰かの手のひらの上にいるように。
誰かに誘われているように。
そんな印象がぬぐえぬままに、彼女はこの件に深入りしていったのだ。
シリアスな表情で訪ねる九条がおかしくて、沖はこの場に不釣り合いな、悪戯っぽい微笑みを浮かべた。
おそらく、九条は今回の件の黒幕がアンダーソンではないかと疑っている。
依頼人の調査はフェイトの基本。
アンダーソンの意図が、バージニアを害するものであったなら・・・おそらく沖はNIKからのバージニアの保護依頼を蹴っていた。

胸の奥から何かが込み上げて来て、笑いが止まらない。涙をにじませて、笑い転げて。沖はようやくその元が何か理解した。
いくつもの組織が彼女をおっている。一介の、何も後ろ盾のないフェイト風情が何をできるのかと。
怖かった。不安だったのだ。

笑うだけ笑って、にじみかけた涙を笑い涙で押し流して。
そうして沖は強気に微笑んだ。
「代価は情報でね。私では手に入らない情報もあるの。“ゲームマスター”ゴードン・マクマソンについて」
相手が承諾したのを確認してから、真理に渡したデータの一部のコピーを手渡した。
「早いでしょ?」
情報自体はたやすく手に入ったのだ。
普通であれば、もっと苦労して、時間もかかって、断片的な情報である筈が、今回はまるで見てくれといわんばかりに自分から飛び込んでくる。
その原因を、沖はうすうす感じていた。
途中まではいつもと同じ。しかし、編纂室と、あるプロジェクト名〜フェニックス・プロジェクト〜が結びついた時から情報が格段に入りやすくなったのだ。
推測でしかないが。
この二つを追うものに対し、誰かが協力している。運命の輪を回す力を持ったものが。
それがマクマソンではないかと沖は推察したのだ。

九条に渡したデータの中に、入っていない情報が一つある。
沖が、アンダーソンにバージニアを害する意図がないと確信するにいたった(そして情報が流されていると確信する原因となった)情報。
今時珍しい「紙」の書類の感触を、フェイト・コートの内ポケットに確かめて。
沖は、扉に目を向けた。
その書類を、今もっとも必要としているであろう人物へ。
「ちょっと遅かったかな。真理さん」

さらに数人の人物が扉を開けるのを待って。
「・・・と言うわけです」
ざっと今までの経緯と、背景(多少の推察を含めた)説明を終え、沖は言葉を切った。

・・・ここまでが自分の成すべき事。
後の決断は・・・
沖は、まるで眠れる女帝の如く、椅子に深く腰掛け、瞳を閉じた真理に目を向けた。
しんと静まり返った部屋の空気が、女帝の言葉を待っている。

http://village.infoweb.ne.jp/~fwje8355/okimasami.htm [ No.293 ]


天使は何処に行ったのか?

Handle : 来方 風土(きたかた かざと)   Date : 99/10/16(Sat) 21:48
Style : バサラ●・マヤカシ・チャクラ◎   Aj/Jender : 21歳/男
Post : フリーランス


「なるほどね。よし、だいたい分かった」
「何が一体分かったんですか?」
真理の問いに風土が答える。
「彼女が消えた理由、彼女が消えた場所、だいたいだけどね」
そう答えた風土に、一同の視線が集中する。風土はテーブルの上のペンとメモ用紙を手に取ると、メモ用紙に線を引く。
「それが一体どうしたんですか?」
「こうすると、ペンを移動させた後が残るだろう。だけど、こうすると」
風土は紙を縦にすると、横に線を引く。
「あんた達から、ペンを移動させた後は見えない。だけど、横から見てる俺には移動させた後が見える」
「つまり、貴方は今横から見ていた訳ですね。それで、何か見えましたか」
「いや、何にも見えない」
「では、なぜ」
「何にも見えないって事は、彼女は自分の意思で跳んだじゃないって事だ。もし、自分の”力”で跳んだとしたら後が残るしね」
「つまり、彼女は外的要因で跳んだと」
「そのとうり、後はその外的要因を捜せばいいわけよ。この場合、彼女に付属する物。もしくは、彼女が乗って来た物」
「彼女が跳んだ時に、乗っていた物。つまり、セスナですね」
「たぶんね。でもこれじゃ、バック・トゥ・ザ・フューチャーかランゴリアーズだね」
風土はそう言うと、苦笑を浮かべる。

 [ No.292 ]


………

Handle : 『親愛なる天使』モリー美琴   Date : 99/10/16(Sat) 09:47
Style : カブト=カブト=カブト   Aj/Jender : 14/女性
Post : フリーランス


 目の前で女性の姿が薄れ………そして、彼女は助けを求めて手を伸ばす………。
「バーニィ!」
美琴は精一杯手を伸ばしたが、その手は彼女に届くことはなかった。
 彼女の手は美琴の手をすり抜け、そして消えてしまった。
「バーニィが……バーニィがぁ〜………」
美琴は、自分の手をしばらく見つめ、そして、小さくつぶやくとすすり泣き始めた。
(守れなかった………)
その気持ちで一杯になる。
 その時、一番最初にきていた男性が話し始める。
「もちろん私は彼女を探しますけど」
「あたしも手伝う!」
彼がそう言うと、美琴は続け、彼の手にすがった。
「ねえ、あたしにも手伝わせて。何が出来るか分からないけど………でも、出来ることなら頑張るから………手伝わせて!」
彼の手を離さないように、美琴は必死だった。その表情を見たのか、男性は何も言わずにそっと手を離す。そして、優しくうなずいてくれた。半泣き状態でうなずく美琴。
「………とりあえず、あの人に連絡しなくちゃ………」
 美琴は何とか立ち直ると、別れ際に教えてもらった真理のアドレスにコールを入れた。
「もしもし?」
少し警戒した真理が映る。しかし、美琴を認めたのか、少しだけそれが緩んだ。
「えっと………ごめんなさい………」
他に言葉が思いつかず、それだけ言うと、再び半泣き状態になってしまった。

 [ No.291 ]


戦姫の帰還、そして、決意

Handle : 羽也・バートン   Date : 99/10/16(Sat) 00:28
Style : ミストレス◎カブト=カブト●   Aj/Jender : 26歳/女性
Post : フリーランス


嫌な胸騒ぎが収まらない。自分の預かり知らないところで大きな「なにか」が動いている。
目の前で、起こるめまぐるしい出来事。
美加の言葉に少し警戒心を解き、かつてない厳しい表情で羽也は頷く。
「…ナイトワーデンの方でしたか」
羽也は彼女の言葉に嘘偽りはないと感じる。人を見る目にかけてはそれなりの自信を持っているつもりだ。だから…。彼女は信じられる。
「貴方が、探している相手と繋がらないかもしれませんが。それでも、手がかりにはなるかもしれませんね。私が今、行こうとしている場所には」
目で、ついてきてくださいと、合図。向かう場所は、“隠れ家”。羽也はそこに向かって走り出す。大まかな場所は掴んでいる。そんなに迷わずにそこへは着けるはずだ。
路地裏を二人の女性が駆け抜ける。

そういえば…。真理は大丈夫だったのだろうか?あの時は、ああ言うしかなかったのだが。いつも言葉足らずのような気がして。走る速度は緩めずにそんなことを考えて。

目的の場所には、そんなに時間は要せずにつくことが出きた。
少し、呼吸を落ちつけて。ドアの前に立つ。……ノック。軽く、二回。静かにドアを開ける。緊張が、走る。
「……沖、さん……?」
目的の人物がこの場にいないことに彼女はまず、驚く。部屋の中をぐるりと見まわしてみて。……彼女が、いない。それに、知り合いと呼べる人物はその場には沖しかいない。そんな羽也の表情に気付いたのか、沖はにっこりと笑って。そこで、沖は簡単に事情を説明する。
「真理さんからお話は聞いています。詳しい事はどうぞ、奥で」
「……えぇ」
言葉少なく羽也は応じ。

そのとき、バイクのタービンの音が遠くから聞こえてくる。羽也は、反射的に振り向き、そっと懐に手を忍ばせ鉄扇に手をかける。
しかし、それはまったくの取り越し苦労だった。
振り返った羽也は、見た。
幻想だろうか─
タービン音とともに窓の向こうに来る、銀狼にまたがる戦姫を。思わず目を疑う。目を疑わずにはいられなかった。
「……真理さん……。」
「こんばんわ、ご無事でなにより」
真理はそういって深く微笑んだ。…だが、その瞳には…。その瞳に宿る光は別れたときのものではなかった。その微妙な変化に気付いたのは、おそらく羽也だけ。
羽也は少し迷って、言葉を選び出す。
「……ご自愛を」
と。今の彼女に対するすべての感情をその一言におしとどめて。“カブト”としての言葉で。
そして、決意。今から自分は彼女を護る“盾”になろうと。支える、土台にになろうと。今、この場で失ってはいけないのは、この目の前にいる親友なのだから。傷つきやすい紅玉の戦姫なのだから。
……すべては。あの、赤毛の天使を護るために。

――そうして“盾の貴婦人”は、目を覚ます。

 [ No.290 ]


そして魔弾は放たれた

Handle : ”無免許探偵”ウェズリィ   Date : 99/10/15(Fri) 15:37
Style : KABUTO,FATE◎,KABUTO-WARI●   Aj/Jender : 2?/Male
Post : Freelans


 探偵は何かを探すように大通りを歩き回っていた。
 狭い小道を抜け、暗い路地裏の片隅を見つめつつ、探偵は自らの歩く足を早めていた。何かを考えつつ。
 その長い間耽っていた思索から解放したのは、ポケットから伝わってくる振動だった。無造作にコートのポケットに入れていた左手に未だ震えているそれをつかませ、大通りを歩いている他の周囲の人々には何事もないのだという風に装いながら、一瞬だけ画面を眺めて再び元の位置に戻した。
 結果は言われずとも判っていた。
 ”天使”は何処かに消え、”死の卿”は己の仕える死神の鎌をかいくぐり、彼が盟約で守ろうとした”姫”は”天使”を守ろうと足掻いているのだ。自らの存在をかけて。
 それならば自分は頼まれた『仕事』を果たすだけだ。

 依頼人が提供した場所…雑居ビルの屋上…から眺める夕闇に沈みかけた中華街の町並み、そして灯りが点る家々は、探偵の機械仕掛けの目には玩具の街のように見えた。人々はここで生活をし、子供を産み、当たり前のように日々を暮らしているのだ。その灯火の下ではきっと平和な営みがされているに違いない…。
 これは感傷なのだろうか。
 自分が捨て去った過去に対する。

 コートの内側からいくつかに別れた部品を取り出す。サンダーボルトを取り出し、愛用のFMJ(フル・メタル・ジャケット(完全徹甲弾))が詰まった弾倉を出して銃に填め込んだ。次に木製の部品を取り上げると銃の把手に取り付けると肩に当てる銃床になった。遊底(ボルト)を作動し撃鉄を引き起こす。左目の”ガッチャ!”とサンダーボルトを有線で接続し、右目でスコープを覗き込んで全ての準備が整った。

 ウェズの機械仕掛けの耳に微かな爆音が響いてきた。スコープの中には中華街の路地裏を疾駆する”銀狼”。そして、その後ろにまたがる紅の”姫”。その後ろをひた走る派手な塗装のB−MAX。なるほど…”Fire Ball"も動いているのは本当のようだ…。
 ストリートで度々耳にする通り”銀狼”の運転は神業であった。スコープに写る小さな姿だけでも、その銀の輝きとともに即時で認識できるほどであった。

 狙いはただ一つ。
 短い直線に入り”銀狼”がアクセルを開けた。”Fire Ball"との距離が若干開く。
 そして魔弾は放たれた。

 ”銀狼”は見ただろうか。”Fire Ball"が文字通り火の玉に変わったところを。
 装甲の切端から一瞬だけ見えた燃料タンクを、サンダーボルトから発せられた10.5mmFMJライフル弾が一撃で貫いたのだ。
 通常のバイクならいざ知らず、ライダールームに仰向けに寝そべる形で搭乗する形のB-MAXでは中の人間は逃げようがなかっただろう。

 その様子をビルの屋上から眺めながら、探偵はポケットロンを再び捜査した。
 SC-8の8番。だいぶ前から解放したままの”姫”とのチャンネル。
 暗号化し圧縮したファイルを一つ流し接続をうち切ると、彼は再び煙草に火を付けた。

 ”Fire Ball”は未だ燃えていた。

http://www.mietsu.tsu.mie.jp/keijun/trpg/nova/cast/index.html [ No.289 ]


sleight of mind

Handle : ”Sworn Sword”九条 誠   Date : 99/10/15(Fri) 03:09
Style : エグゼク◎●、カリスマ、レッガー   Aj/Jender : male/30代前半
Post : イワサキ


突然の彼女の消失。そして居合わせた人物の悲鳴。苦笑を浮かべて壁を離れる。
「皆さんはどうするつもりです? 私は彼女を捜しますけど」
言って濃い微笑を浮かべ沖に耳打ちする。
「幾つか調べて貰えませんか? アンダーソンとその背景について」
突然彼女は笑い出す。そしてうなづく。
目元の涙を拭いながら彼女は情報で代価を支払って欲しい、私では手に入らない情報があるのと言いお互いに情報交換をして幾つかのデータを交換することにする。
「はい、貴方の欲しいデータはこれ。もうまとめてあるわ」
 思わず驚いた顔を見せると、
「早いでしょ?」と言ってまた笑った。
もう一度苦笑を浮かべる。運命の輪の回る速度は自分が思うよりも遙かに速いらしい。
右手で顔を押さえて声を殺して笑う。
未だこみ上げる笑いを堪え報告書に目を通す。
軽く一言か二言つぶやき目線をあげる。
「おや、ついに来ましたか……」
窓の外に目を向け呟いた……

 [ No.288 ]


ザンジュウケン、去らず。

Handle : “バトロイド”斬銃拳   Date : 99/10/15(Fri) 00:00
Style : カタナ◎● カブトワリ チャクラ   Aj/Jender : 25歳/男性
Post : フリーランス/ソロ


「くっくっく・・・面白い・・・だが」
先ほどの男の消えた闇を見つめる。
「何を焦っている?お前達は少女を確保したんじゃなかったのデスカ?」
ザンジュウケンは両手の武器をコートの中の鞘とホルスターに収めると人差し指で眼鏡を上げた。
「忠告とは小生意気デスネ。賞金はワタシにとって勲章・・・。
金目当てとは品のナイ言い方ダ。」
しかし・・・
何かあったのならチャンスかもしれない。
ザンジュウケンは再び路地の闇へと歩き出した。

 [ No.287 ]


テンペスト

Handle : “監視者”壬生   Date : 99/10/14(Thu) 22:29
Style : クグツ◎・チャクラ・カゲ●   Aj/Jender : 30代/男
Post : 日本軍大災厄史編纂室 室長


B−MAXのシートに壬生は目を閉じ、眠るように横たわっていた。
「銀狼か、以外な顔に会うものだな。」
先ほど彼の前に立ちふさがっていた若者の顔が蘇る。
そして、紅の瞳。
強い意志をもった者達だ、しかし・・・
幾千もの命、幾万もの瞳に恐怖を刻み彼は生きてきた。
そして彼らも例外ではないはずだ。
あるいは、あの少女が真に“鍵”であるのなら、自分の仕事もまもなく終わるかもしれない。
「ただ、主命を遂行するのみ。」
何があろうと、自分の使命にかわりがあろうはずがない。
自嘲気味に口元を歪め、彼は呟いた。


「“左腕(レフトハンド)”か?」
「SIR!」
「“右腕(ライトハンド)”が倒された。」
「月村の旦那が?スゲェ!いったいどんな化け物があのサムラーイを倒したんだい?」
通話相手は同僚の(彼らにそんな連帯感がすこしでもあるとしたら、だが)死をむしろ喜んでいるかのようだ。
「おまえの出番だ。」
「オーケィ。ボース。」
「すぐに私もパーティ会場に到着する。場を持たせておけ。」
「YAAA!チケットは?」
「じきに届くはずだ。存分に踊れ“サンタナ”。」
「I got you sir!!」

 [ No.286 ]


死の卿と銀狼の疾駆

Handle : “デス・ロード”アレックス・タウンゼント   Date : 99/10/14(Thu) 21:03
Style : カブト=カブト◎●,バサラ   Aj/Jender : 32?/Male
Post : from Land of Death


――霧の荒野を駆ける影。
「ねえアレックス。今度、大英博物館で式典があるのよ。私の護衛ということにして、一緒に行かない?」
 猫の瞳のようにきらきらと輝く、緑の瞳。夢を見ていた。幾千の幻が現れては消えていった。
「あら。じゃあ、ま〜たチャイナドレスの華僑のお嬢さんの警護に? まったく華やかなお仕事よね!」
 からかうように見つめる、紫色の瞳。その中に映る、頭上のホログラフの花火。どこで見たのだろう? 確か、N◎VAの・・・・
――それは銀色の剣。忘却の霧を切り裂く剣。
「李 黄白。お前を大量殺人容疑で逮捕する。生で以ってその罪を贖え」
 猟犬の厳しい瞳。無残に散らばる人形の残骸。赤い液体。
「‥‥貴公とここで会うとは奇遇だな」
 シェードの奥の剣鬼の光。黒の剣舞と硝煙の匂い。
――狼は死の荒野を抜け、露の残る草の上へ。
 心地よい感覚だった。何もかもが混じり合い、どこかへ沈んでいくようだった。
――堂々とした体躯。その瞳もまた銀。
 俺の目の前に狼が立っていた。見事な毛並みだった。
「貴方が眠るのはここじゃない‥‥まだ立たなければならない舞台が残っている」
 声が聞こえた。この狼が喋っているのか?
「‥‥選んだ選択が‥‥望む未来へと・・その先へと繋がっている事を願うよ」
 銀狼が俺を見つめていた。銀色の瞳が見つめていた。
――その瞳の奥に光る、銀の紋章。

(‥‥助かったの‥‥か?‥‥)
 アレックスの体に感覚が少しだけ戻った。半ば夢の中にいるようだった。誰かが手当てしてくれているようだ。
 叫び声が聞こえた。彼の左腕に何かが触れた。
「死の卿、貴方をもう一度立たせる事と‥‥」
 うっすらと戻ってきた視界に何かが映った。銀の狼のエムブレム。
 何かの爆音が響いてきた。アレックスは再び意識を失った。

http://www2s.biglobe.ne.jp/~iwasiman/foundation/repo/991009.htm [ No.285 ]


クリムゾン・アイの呼ぶ風

Handle : “銀狼” 神楽 愼司   Date : 99/10/14(Thu) 14:06
Style : カゼ◎、カゼ●、タタラ   Aj/Jender : 推定年齢26 / 男性
Post : シルバーレスキュー グラウンドスタッフ


「きっかり時間には間に合わせてくれ」
ERと共に現れた同僚にシンジは念を押す。そして、最後にバックパックから薬を取り出し、自らに打った。
走る痛みに耐え兼ねてメットのインカムに言葉をうち、SAPSの_______デス・スターのモニターを覗き込む。
今や自分が契約の元に守るべき彼女は一躍、この都市の寵児だ。デス・スターを支える方々のニューロ達がドミネートする回線とその情報が集約し、SRを、今のシンジをモニターを通して支えている。
何よりも、今は情報が全てだ。まず、彼女を見つけなければ。
やがて静かにモニターを見つめるシンジ目の前で、一つの紅い輝点が瞬いた。

腕を半ば抱える様に走る路肩の彼女に近づくと、驚くような素早さで振り返り身構えた。
言葉よりもまず先にシンジは彼女の目を見詰めながら、アレックスの血に濡れた手で上着から銀色に彩られたSR(シルバー・レスキュー)のバッジを開く。
「貴方とアレックスを繋ぐ、糸を辿って漸くだ__________ミス・秦真理」
「SRの神楽愼司だ。貴方に繋がる二つの契約を守る為にここへ来た。俺の選んだ選択肢が貴方の望む未来へと・・その先へと繋がっている事を願うよ」シンジはアレックスに呟いた言葉を静かに彼女へも投げかけ、静かに微笑んだ。
秦真理とシンジが名を呼んだ彼女は何処までも優しく、柔らかく、深い眼差しで辺りとシンジを交互に見つめた。
「良くここの場所がわかりましたね」
「一躍貴方はこの都市-まち-の時代の寵児だよ、ミス・秦真理」
「真理でいいわ」
「では___________真理さん」シンジはバイクを降り、治療を促す様に顔を傾がせて彼女の腕を優しく手に取る。
手元の機材で出来る限りの治療を施しながら、見つめた。
「今の僕らには時間も選択肢も少ない。僕やアレックスが選ぶ前に、貴方の選んだ答えが必要だ」
真理が昂ぶる感情とそれと相反する生来の彼女の何かがせめぎあう苦しさか、ふと視線を落とす。ここにまで深き深淵を植え付け様と言うのか、あの男達は。シンジは唇を噛締める。
「貴方の選んだ答えを何よりも信じて欲しい。これから我々が出会ってゆくものは、紛れも無く霧の向こうに隠された真実・・いや、現実なんだ。当事者が望むべくなく、与えられてしまう事も巡り会う現実もある。貴方が守ろうとしている彼女はそう言ったものに捕われた灯火だ。何処まで抗う事が出来るのか。何処まで抗う事が許されているのか。それすらも彼女には見えていない」
真理がゆっくりと視線を上げる。
シンジには彼女に何処まで自分の声が届いたのか。自分と同じ様な身近な死の過去を背負うアレックスの声が何処まで繋がったのか。彼女の思いの丈の内すらも窺がえなかった。だが、今本当にあの娘の現実に手を伸ばせるのは彼女しかいないのだ。あの忌まわしい過去に、自分もアレックスも手が届かなかった。再度伸ばす手を忘れた訳ではない。まだその時ではないだけだ。
「アレックスも後から来るよ。SRが必ずそうする」シンジは真理の腕に触れる。「貴方と彼女の側にいる人達であいつ等から逃げおおせろと言うべきなのか、それとも戦い抜けと言うべきなのか、それともまだ俺達が気づいていない現実が待っていると言うべきなのか、正直俺にも解らない。だが______________」
治療を済ませて、バイクに跨り後部にスペースを作る。
「何よりも、大切なのは貴方を運ぶ事だ。彼女のいる場所に・・貴方が望む場所に」
真理がゆっくりとシンジに近寄り、路地のむこうを見つめる。
「国家が評価する現実とは、一体何なのでしょうね?」
もう出すべき言葉は尽くしたと言った顔で、真理が解らない程、僅かに双眸に涙を浮かべる。
「それを見つけるのは真理さん、今は貴方だよ」

「バイクは大丈夫かい?」
シンジの言葉に秦真理・・クリムゾン・アイが頷く。
「なら、後ろに乗ってくれ」路地の角に止まる2台のB-Maxの派手な塗装が嫌でも目に付く。「ハデに飛ばす事になるから」
真理の双眸は既に目的を見据えたのか、落ち着いている。
「間に合うかしら」
「間に合うさ」シンジは笑う。「戦おうとしているのは俺達だけじゃない」
SAPSの、今は消えたバージニア・バレンタインの輝点には複数の青い輝点が寄り添っていた。そのちょっとした過去のもう一つの現実は、シンジの背中を押すには十分だった。
「俺は銀狼。LU$Tを駆け抜けるカゼの一人だ」
キーを差し込み、一気にA-Killerのタービンを高機動へとシフトする。その後ろへと真理が座った。
「行き先は?」
「わかっているわ_______まずは、ここよ」
【紅の瞳】秦 真理がデス・スターに映る地図の一角を指差す。
「なら、話は早いゼ」
シンジがA-Killerから開け放った耳を聾するかの様な超高起動のタービン音に少し離れた一角にいた人垣が一斉に振り返る。普通なら蹲るゼ。どこぞの手の者も蟻の様に群がりやがる。シンジは口元を歪めて笑った。
「壁があっても風が吹き抜ける様に___________駆け抜けるだけさ」
唸りを上げて路地へとシンジはバイクを駆った。
真理の迎えを待つ、その時間へと。

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.284 ]


乾いた血と記憶

Handle : “銀狼” 神楽 愼司   Date : 99/10/14(Thu) 13:16
Style : カゼ◎、カゼ●、タタラ   Aj/Jender : 推定年齢26 / 男性
Post : シルバーレスキュー グラウンドスタッフ


男は水が流れる様に滑らかに、優雅にシンジの目の前に路地から姿を現した。

建物の周りからは自然と人の気配が遠のいている。獣の様に自然に研ぎ澄まされるこの町の住人自身を包む不安からは自然に足を遠のかせる為だ。
人の足を止める、暗く冷え切った場は自然と目の前のその男から広がって伝わる。それは久しくシンジが遠く離れ様としていた香りだった。
「見た顔だ。・・・そう、私はオマエを覚えている」
砕けて罅の入った黒いミラーシェードを指でなぞりながら男は口元を綻ばせる。「銀狼だったな」
シンジはアクセルを一度音高にふかした。超高速回転のタービンの機動音が路地に響いて辺りを満たす。
「覚えていてくれて光栄だヨ」シンジはバイザーを上げてメットを外した。「あの夜と同じ位いい夜だ・・・あれからゆっくりと眠れているかい?」
壬生という名を持つ男が闇に身を預けて寄りかかり、笑い、コートを揺らす。そして、黒い皮手袋に包まれた両手の握り締めながら言葉が返る。
「今夜は冷えるな・・・霧を支える石床に眠る君の友人達の子守唄が心地よい。私には過ぎた贅沢だよ」
シンジは無表情に凍りつく鮫の様な凄絶な笑みで壬生を見つめ返した。
彼の握り締めるハンドルがミシリと嫌な音を立てる。その音を聞き、壬生は微笑んだ。
「それも、もう終わる」
「誰が終わらせると言うのだね? Mr.カグラ」
口元を僅かに歪めながら壬生がシンジを見つめる。だが、思い出したかの様に傍らに止まるB-Maxを振り返ると微笑んだ。
「待たせている人がいる。迎えに行く時間だ。先に行かせてもらうよ」
シンジが答えるより早く壬生はB-Maxのキャノピーに手を触れ、音も無く開いたその顎へと身を収める。
同時にシンジの行く手を遮るかの様に2台のB-Maxが静かに移動し、その背後を、道を塞いだ。それを確かめるかの様に壬生を乗せたB-Maxは唸りをあげて通りを飛び出して行く。
シンジは舌打ちしながらSAPSのモニターに手を触れた後、バイクから降り立ち、後部座席の備え付けのバックパックを取って背負い、更に座席の傍らにある歪な金属と機構で加工されたサックの様な手袋を填める。幾度と無く血に塗れた過去の残骸を再び纏った両手を垣間に見つめ、自嘲の笑みを浮かべながらシンジは頭を振る。
「今はお預けだ」
壬生の出てきた闇に聳え立つ路地と建物を見上げ、シンジは呟いた。

階段を駆け上がったシンジを出迎えたのは、砕けた扉と異様に崩れた壁だった。
「貴方が眠るのはここじゃないはずだ、【デス・ロード】アレックス・タウンゼント。まだ立たなければならない舞台が残っている」
バックパックから医療キットを手に取り、アレックスへと歩みより、上着から銀色に彩られたSR(シルバー・レスキュー)のバッジを開かぬその目へと見せ、言葉を続ける。
「貴方が守る彼女には自身も知らない人脈の糸が絡んでいる様だね」シンジは言葉を紡ぐ。その目の前でアレックスの傷を被う包帯が直ぐに血に溢れて染まる。
「遅れてすまない、SRの神楽愼司だ。貴方と彼女に繋がる二つの契約を守る為にここへ来た。俺の選んだ選択肢が貴方と彼女の望む未来へと・・その先へと繋がっている事を願うよ」シンジは静かに微笑んだ後、傍らのインカムにシンジは叫ぶ。
「エマージェンシーコール、Lv.1発生!」空電音の合間から応答が返る。「こちら03、シルバー・ウルフだ。カーゴをこちらのポイントに飛ばしてくれ。ERをフルスタンバイで乗せろ。 緊急治療措置を要請する!」
叫んだ声で、微かなうめきがアレックスから漏れる。
「暫くすれば立ちあがれる様にする。SRが必ずそうする」シンジはアレックスの腕に触れる。
「貴方と彼女の側にいる人達であいつ等から逃げおおせるべきなのか、それとも戦い抜くべきなのか、それともまだ俺達が気づいていない選択肢で切り抜けるのがいいのか、正直俺にも見えていないんだ。今俺が出来る事は______________」
立ちあがり、建物の上空から響いてくるカーゴ・ヘリの爆音を見つめる様に窓の外を見つめる。
「【死の卿】アレックス・タウンゼント、貴方をもう一度立たせる事と・・何よりも大切なのが彼女を運ぶ事だ。あの少女と皆のいる場所に」

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.283 ]


忠告

Handle : “疾駆の狩人”神狩裕也   Date : 99/10/14(Thu) 01:18
Style : チャクラ◎、カゲ、ヒルコ●   Aj/Jender : 23/男
Post : 狩人


どこからか衣服を調達し、神狩は路地裏を疾走していた。
『イソゲ・・・イソゲ・・・』
先の闘いで鋭敏になった感覚を通し、内部の“鬼”がそう告げる。
なぜ、急ぐべきなのか。理由は解らない。だが、この感覚が当てにならなかったことは一度もないのだ。
やがてある光景が見えてくる。対峙する男女。女の方は羽也。男は・・・知らない顔だ。ただ、両手に持つ武器や見のこなしからその筋のプロというのは解る。
すたん。自然に体が動いていた。
「くくく・・・厄介な事になっているな。ここは俺に任せてもらおう」
皮肉な笑い声と共に羽也の前に立ち、そう言い放つ。
羽也とそこに現れたカブトらしき女性−先ほども見かけた顔だ−が後方に去ったのを確認すると、神狩は目の前の男に声をかけた。
「見たところ賞金目当てか何かだな。忠告しておく。下手な気分でこの件に首を突っ込むな。命が惜しければな」
感情をこめずに淡々と告げる。今は闘いの相手をしている時ではない。「何か」が確実に進行している・・・それを確かめねばならないのだ。己の“鬼”がそう告げているのだから。
「忠告はしたぞ。これからどうするかは貴様の勝手だ」
斬銃拳の答えも待たずそれだけ言い放つ。同時に周囲の様子に目を配る・・・羽也と先のカブトはもう離脱したようだ。これで心配の種はない。
直後、神狩は踵を返し再び裏路地へ跳躍した。「何か」が起きている場所へと向かうべく。

 [ No.282 ]


接近、そして離脱

Handle : ”LadyViorett”我那覇 美加   Date : 99/10/14(Thu) 00:07
Style : カブト◎=カゼ●=カブトワリ   Aj/Jender : 28/female
Post : フリーのカブト/元”麗韻暴”二代目頭の兼業主婦


羽也の後を追いかけて美加は走りつづけていた。
『彼女ももしあの子を探していて巻き込まれているなら・・・』
多分他の相手も彼女をマークしているだろう。
走りつづけるその先に一つの光景が見えてきた。

前に羽也と先ほどのクグツ、そして向かい合った先にチンピラが立っていた。

「くくく・・・厄介な事になっているな。ここは俺に任せてもらおう」
皮肉な笑い声と共に羽也の前に立つ。
そして羽也が後ろを振り向きこちら側に走り出す。
「ミセス、こちらへ。私はナイトワーデンから派遣された者です。」
小声で呼びかけると彼女はこちらに気づき、警戒しながら近寄ってくる。
「貴方は誰?」
「”Viorett"と言います、"美加"と読んでもかまいませんわ、ミセス・バートン。
貴方も多分今回の依頼受けているかもと思って追いかけていたのですが・・・
急ぎましょう、彼女の身に"何か"が起こらないうちに。」

その声は焦りを含んでいた。

 [ No.281 ]


▲ Return to NOVA